2024/10/01

DDBJ 中川草特命准教授らの論文が「GGS PRIZE 2024」を受賞

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJセンター 中川草 特命准教授(当時)、同センターの有田正規 教授、阿部貴志 特命教授(当時)、同機構データサイエンス共同利用基盤施設ライフサイエンス統合データベースセンター 片山俊明 特任教授らのグループが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム情報を元に詳細に追跡した研究論文がGGS PRIZE 2024を受賞しました。GGS PRIZEは日本遺伝学会の出版する学会誌「Genes & Genetic Systems (GGS)」に掲載された論文を対象として、優れた学術論文1~3編に与えられます。

中川博士

本研究では、GISAIDデータベースに登録されているSARS-CoV-2ゲノム配列やサンプリング情報を活用し、日本国内で流行した、いわゆる第2波から第5波を対象に、祖先となったハプロタイプを同定しました。祖先ハプロタイプから、各ゲノム配列の塩基変異を元にハプロタイプを分類し、各都道府県でいつからいつまでサンプリングされたのかを閲覧できるWebプラットフォーム “SARS-CoV-2 HaploGraph” を開発し公開しました。SARS-CoV-2  HaploGraphは COVID-19データポータルJAPAN に、またそのコードと統計データは github で公開されています。

本研究により、日本の中で新型コロナウイルスの流行波の主流となった変異株がいつ生じ、またいつまで流行していたのかなどがゲノム情報に基づいて詳細に明らかになりました。例えば第2波は2020年の8月周辺に流行のピークがありましたが、その変異株は2020年の5月には存在し、また、その翌年の5月末まで日本国内で流行していたことなど、流行動態の詳細が明らかになりました。また、2021年8月に流行のピークを迎えていた第5波の主流だったデルタ株についても、同年10月には変異が蓄積しすぎているのではなく、様々な変異を持った株が一斉に急になくなっていることなどが分かりました。

このようなウイルスゲノム情報に基づいた感染動態の解析は、今後のウイルス感染症の様々な対策にも寄与すると考えられます。

中川博士は、「国立遺伝学研究所生命情報・DDBJセンターの特命准教授として研究グループに加わり、“日本国内における新型コロナウイルスのゲノム情報に基づいた詳細な解析については、自分たちがやらなければ“という思いを持って、チームで解析に取り組みました。国内でのコロナの流行伝播の状況が、日本遺伝学会の学会誌という誰もが閲覧できる媒体に掲載され、さらにその内容を評価していただいたことを大変うれしく思います。日本国内の新型コロナウイルスのゲノム情報が、極めて高精度かつ網羅的に利用できるからこそ可能になった解析であり、関係者のみなさまにも御礼申し上げます」と話しています。

GGS PRIZE 2024 受賞論文:
So Nakagawa, Toshiaki Katayama, Lihua Jin, Jiaqi Wu, Kirill Kryukov, Rise Oyachi, Junko S Takeuchi, Takatomo Fujisawa, Satomi Asano, Momoka Komatsu, Jun-Ichi Onami, Takashi Abe, Masanori Arita. SARS-CoV-2 HaploGraph: visualization of SARS-CoV-2 haplotype spread in Japan. Genes & Genetic Systems (2023) Nov 21;98(5):221-237. DOI: 10.1266/ggs.23-00085


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