技術課 / フェノタイプ研究推進センター / 細胞建築研究室
The functional roles of zebrafish HoxA– and HoxD-related clusters in the pectoral fin development
Mizuki Ishizaka, Akiteru Maeno, Hidemichi Nakazawa,, Renka Fujii, Sae Oikawa, Taisei Tani, Haruna Kanno, Rina Koita, and Akinori Kawamura
Scientific Reports (2024) 14, 23602 DOI:10.1038/s41598-024-74134-9
条鰭類の魚の胸ヒレと、肉鰭類に属する四肢動物の前肢は、形態や機能が異なるものの、進化的起源を共通する相同器官の関係にあります。両者の発生メカニズムを比較することで、脊椎動物の形づくりの進化を紐解くことが期待されます。ノックアウトマウスの解析から、9~13番のHox遺伝子を含むHoxAおよびHoxDクラスター全域を欠損させると、前肢が大幅短縮することが分かっています。また、ゼブラフィッシュの相同なHoxAとHoxDクラスター内のhox13を欠損させた変異体では、胸ヒレに形態異常を呈することが示されていました。しかしながら、ゼブラフィッシュにおいて、13番以外のhox遺伝子の胸ヒレ形成における寄与に関しては不明でした。今回、ゼブラフィッシュでHoxAとHoxDと相同なクラスター全域を欠失した多重変異体を作製した結果、ノックアウトマウスで観察された異常と類似して、胸ヒレが大幅に短縮することが分かりました。さらに、生存したhox変異体・成魚の胸ヒレをCTスキャンで詳細に解析した結果、前肢と相同性が指摘されている胸ヒレの領域において、形態異常が確認されました。以上の結果から、条鰭類と肉鰭類へと分岐する以前の古代魚において、既にHoxAとHoxDクラスター内のHox遺伝子による胸ヒレ形成システムが確立されていたことが、今回の研究成果からさらに支持されました。
本研究は、埼玉大学大学院・理工学研究科・生体制御学プログラム川村哲規准教授らのグループが、国立遺伝学研究所公募型共同研究NIG-JOINT(38A2019, 7A2020, 66A2021, 18A2022, 31A2023)の支援を受けて行われました。
図:(A) ゼブラフィッシュhoxaa;ab;daクラスター3重欠失変異体における胸鰭の大幅な短縮。受精後3日胚。(B) 分離した胸鰭(5日胚)の軟骨細胞を染色した。(C) マイクロCTスキャン解析により明らかとなったhox変異体成魚における胸鰭の形態異常。