2023/06/22

オスの性染色体だけでバイセクシュアル種へ進化する
~緑藻ボルボックスの非モデル種の全ゲノム解析で解明~

Press Release

Expanded male sex-determining region conserved during the evolution of homothallism in the green alga Volvox

Kayoko Yamamoto, Ryo Matsuzaki, Wuttipong Mahakham, Wirawan Heman, Hiroyuki Sekimoto, Masanobu Kawachi, Yohei Minakuchi, Atsushi Toyoda, Hisayoshi Nozaki

iScience (2023) 26, 106893 DOI:10.1016/j.isci.2023.106893

ボルボックス(Volvox)は緑の宝石に例えられる美しい緑藻類です。ボルボックスには卵と精子を形成するメスとオスの性(sex)があり、また、異なる遺伝子型でメスとオスが決まる「雌雄異株種」と、同じ遺伝子型の一個の培養株の中で卵と精子を形成する両性型の「バイセクシュアル種」が存在します。ボルボックスの仲間では雌雄異株種からバイセクシュアル種への進化が多く認められ、「生物多様性を生み出す性の多様性」という点で重要です。

今回、日本女子大学の山本荷葉子学術研究員(兼学振特別研究員)ら及び国立環境研究所の松﨑令高度技能専門員らは、国立遺伝学研究所、東京大学、コンケン大学、カラシーン大学の研究者との共同研究により、バイセクシュアル種への進化を探るためにタイ国産株のボルボックス・アフリカヌスの全ゲノム解析に取り組みました。

これまでボルボックスでは、雌雄が遺伝的に異なる雌雄異株種からバイセクシュアル種に進化するためには、メスの性染色体にオス特異的遺伝子が取り込まれることが必要と考えられており、性染色体は雌雄で異なっていて、各々メスまたはオスに特異的な遺伝子を保有するものと解釈されていました。しかし、タイ国産株のバイセクシュアル種では、メスの性染色体に相当する部分が全て欠落している一方で、オスの性染色体に相当する部分がほとんどそのまま残存していました。このことは、性染色体にはメスとオスを区別する以外の未解明の機能が存在することを示唆し、今後の研究が期待されます。

本研究の一部は文部科学省 科学研究費新学術領域研究 先進ゲノム支援(PAGS)(16H06279)の支援を受けて遂行されました。また、本研究の解析の一部は遺伝研スーパーコンピュータシステムを用いておこなわれました。

本研究成果は国際科学雑誌「iScience」に2023年6月16日に掲載されました。

  • 詳細はこちら(国立環境研究所ウェブサイト)
Figure1

図: 緑藻ボルボックスにおける有性生殖の4タイプ。


リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube