2021/10/20

栽培化歴のある雑草ヤハズエンドウのゲノム多様性
~遺伝的多様性を導入した育種で農作物に雑草のたくましさを~

Genome features of common vetch (Vicia sativa) in natural habitats

K. Shirasawa, S. Kosugi, K. Sasaki, A. Ghelfi, K. Okazaki, A. Toyoda, H. Hirakawa, S. Isobe

Plant Direct (2021) 5, e352 DOI:10.1002/pld3.352

プレスリリース資料

かずさDNA研究所は東京大学、国立遺伝学研究所と共同で、全国12地点から採取した1243個体のヤハズエンドウ(別名カラスノエンドウ)のゲノムを比較し、その遺伝的多様性を評価しました。

農作物を育てるには、雑草を排除し病害や虫害を農薬などで防がなくてはなりません。農作物が雑草より弱いのは、栽培化*3の過程で遺伝的多様性を失ったことが原因のひとつと考えられます。

ヤハズエンドウはかつて農作物として栽培化された雑草で、どの程度の多様性があれば野生で生き延びられるのかを知る手掛かりとして注目されます。

ゲノム全体にわたって遺伝的多様性が見られたなかで、開花時期に関する遺伝子セットは多様性が縮小していました。この結果は、一部の遺伝子セットで多様性がなくてもゲノム全体で遺伝的多様性があれば雑草のたくましさは保たれることを示しています。

今回の結果は、農作物として重要な形質の選抜過程で、その形質に関わらない遺伝子の全体としては野生の原種が持つ多様性を導入すれば、除草・防虫・消毒といった農作業コストや環境への負荷を低減させた農業が実現できることを期待させるものです。

本研究の一部は科研費(24710237と221S0002)の助成を受けて実施しました。

研究成果は国際学術雑誌 Plant Direct において、10月7日(木)にオンライン公開されました。

Figure1
図: 従来の育種では、新品種を確立するための選抜の過程で遺伝的多様性が排除される。ゲノム解析により、高い多様性を維持しつつも、農業生産に適した遺伝子を固定した集団が作成できれば、たくましさと高い生産性を持つ作物が開発できる可能性を示している。

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