Press release
Comparative genomic analyses illuminate the distinct evolution of megabats within Chiroptera
Masato Nikaido, Shinji Kondo, Zicong Zhang, Jiaqi Wu, Hidenori Nishihara, Yoshihito Niimura, Shunta Suzuki, Kazushige Touhara, Yutaka Suzuki, Hideki Noguchi, Yohei Minakuchi, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Sumio Sugano, Misako Yoneda, Chieko Kai DNA Research 2020 September 23 DOI:10.1093/dnares/dsaa021東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の二階堂雅人准教授、同 総合理工学研究科の張子聡大学院生、国立遺伝学研究所の近藤伸二特任准教授および東京大学 生産技術研究所の甲斐知惠子特任教授らの共同研究グループは、デマレルーセットオオコウモリとエジプトルーセットオオコウモリ(写真)の全ゲノム配列を解読しました。
オオコウモリはココウモリの一部から分岐したグループであり、その急速な適応進化については多くの研究者が注目していました。今回の研究では、全ゲノム配列を解読したオオコウモリ2種に加えて、ココウモリを含む22種の哺乳類を対象とした網羅的な比較ゲノム解析を実施し、オオコウモリ独自の進化に関わる遺伝子の探索を行いました。
その結果、オオコウモリのゲノム中において、免疫やタンパク質代謝、そして嗅覚系の遺伝子において適応進化の痕跡(用語1)を検出することに成功しました。これらはオオコウモリが持つ高い抗ウイルス免疫力や、果実食という特殊な食性の獲得と深く関連していると考えられるのです。本結果は、オオコウモリの適応進化について重要な知見を与えるだけでなく、人獣共通感染症ウイルスの感染・発症メカニズムに関わる医学研究への足がかりになると期待されます。
研究の成果は9月23日に『DNA Research』に公開されました。
遺伝研の貢献 Illumina社のHiSeq 2500システムを用いたゲノム配列の解読、ゲノムアセンブリの構築およびゲノムの注釈づけを実施いたしました。また、比較ゲノム解析による正の選択を受けた遺伝子候補の探索やRNA-seqデータを用いた遺伝子発現量解析を行いました。
図: 今回全ゲノム配列を解読したルーセットオオコウモリ 左:デマレルーセットオオコウモリ(Rousettus leschenaultia) 右:エジプトルーセットオオコウモリ(Rousettus aegyptiacus) 写真提供:長谷川政美 統計数理研究所名誉教授