2020/04/13

液体のように振る舞うクロマチン

Fluid-like chromatin: Toward understanding the real chromatin organization present in the cell

Kazuhiro Maeshima, Sachiko Tamura, Jeffrey C. Hansen and Yuji Itoh

Current Opinion in Cell Biology (2020) 64, 77-89. DOI:10.1016/j.ceb.2020.02.016

真核生物のクロマチンはゲノムDNA、ヒストンや他の様々なタンパク質からなる、負に帯電したポリマーです。その電荷に富んだ性質から、クロマチンの構造は、伸びた10-nm線維や折り畳まれた30-nm線維、凝集体/液滴など、周囲の環境に応じて変化します。この10年新たに開発された技術によって、クロマチンは規則正しい構造ではなく、局所的に液体のようにダイナミックで、不規則な構造を持つことがわかってきました。しかし、一つのイメージング (またはゲノミックス) 手法ではクロマチン構造の一側面しか知ることはできません。また私たちは美しいイメージやモデルに感銘を受けがちですが、それらが実際のクロマチンの姿を示していない可能性があります。したがって、細胞内のクロマチンの真の姿を捉えるためには、多くの技術的アプローチに基づいた、幅広い解析を行うことが重要です。この総説論文では、クロマチンに関する現在の知見と、その知見を得るための方法についてクリティカルに論じました。

本研究は、JST CREST (JPMJCR15G2)、JSPS科研費(19K23735, 16H04746, 16H06279 (PAGS), 19H05273)、武田科学振興財団、アメリカ国立科学財団(1814012)、国立遺伝学研究所博士研究員、JSPS特別研究員(PD)の支援を受けました。

Figure1

図:細胞核内のクロマチン階層構造の模式図
DNAはヒストン八量体に巻き付き、ヌクレオソームを形成している。10-nmクロマチン線維は、コヒーシンや他のタンパク質によって、ループ構造を形成する。ヌクレオソームの鎖はコンパクトなクロマチンの塊 (ドメイン) を形成し、ドメイン同士が相互作用することでコンパートメントができる。コンパートメントAとBはそれぞれ、転写がアクティブなクロマチンと、転写が不活性なクロマチンを表すと考えられている。間期の染色体は、染色体領域を形成する複数のコンパートメントからなる。この模式図は、現在考えられているモデルを単純化して示したものであり、実際はもっと複雑な階層構造を形成しているとも考えられる。


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