活性酸素を除去する新型酵素を昆虫から発見

Press Release

Comparative analysis of seven types of superoxide dismutases for their ability to respond to oxidative stress in Bombyx mori

Yuta Kobayashi, Yosui Nojima, Takuma Sakamoto, Kikuo Iwabuchi, Takeru Nakazato, Hidemasa Bono, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Michael R. Kanost and Hiroko Tabunoki

Scientific Reports 2019 URL:www.nature.com/articles/s41598-018-38384-8

プレスリリース資料

東京農工大学大学院農学府生物生産科学専攻 小林裕太と大学院連合農学研究科 野島陽水、大学院農学研究院生物生産科学部門 天竺桂弘子准教授とカンザス州立大学Michael R Kanost教授、国立遺伝学研究所、ライフサイエンス統合データベースセンターにより構成された研究グループは、活性酸素を除去する働きのある新型の酵素を昆虫から発見しました。本成果は、昆虫が他の生物にはない環境適応能力を持つ理由の解明に繋がると期待されます。

昆虫は他の生物が選ばない毒成分を含む食物や、厳しい生存環境を積極的に利用して、地球上で大繁栄することができたと考えられています。その適応システムのひとつとして、環境からストレスを受けた際に発生する多量の活性酸素を素早く処理できる能力があります。そのため昆虫は哺乳類とは異なる、活性酸素を除去する特別なシステムを持つと推測されていましたが、それに関わる酵素については分かっていませんでした。

本研究チームは、蛾(チョウ目昆虫に分類されます)に注目しました。公開されているカイコやタバコスズメガの遺伝子データベースから、活性酸素を除去する酵素SODを、バイオインフォマティクスを用いて予想される遺伝子産物の類似性に着目し探索しました。その結果、カイコでは既に知られている3タイプに加えて新しい4タイプのSOD遺伝子が存在することを発見しました(図)。4種類のうち2種類は、既知のSODでは知られていないユニークなタンパク質構造を持ち、それらの発現は組織や発生段階、ストレス要因に応じて異なっていました。さらに、タバコスズメガではカイコと共通するSOD遺伝子と共通しないSOD遺伝子が存在し、それぞれの昆虫において異なる遺伝子を使い分けていることが分かりました。

本研究チームが発見した特別なSODの機能解析が進めば、昆虫の環境適応戦略の仕組みの解明に役立つことが期待されます。さらに、昆虫とヒトのSOD遺伝子機能の比較により、ヒトのSODが進化の過程においてどのように機能の変化を遂げてきたのかを推測することができます。

研究体制
本研究は国際共同研究として東京農工大学(上記参照)、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所(豊田敦特任准教授、藤山秋佐夫特任教授)、情報システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設ライフサイエンス統合データベースセンター(坊農秀雅特任准教授、仲里猛留特任助教)およびアメリカ・カンザス州立大学(上記参照)で実施されました。

国立遺伝学研究所の貢献
比較ゲノム解析研究室および先端ゲノミクス推進センターはトランスクリプトーム配列解析を実施することにより、機能遺伝子の基盤情報提供と質の向上に貢献しました。

情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)の貢献
ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)はトランスクリプトームデータ解析を実施することにより、遺伝子発現の定量情報提供と生物種間比較データ解析に貢献しました。

Figure1

図:昆虫の遺伝子データベースから新規SOD遺伝子配列を発見


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