障害物を検知して複製を停止させる機構―DNAポリメラーゼεによるヘリカーゼ活性の制御―

DNA polymerase ε-dependent modulation of the pausing property of the CMG helicase at the barrier

Kohji Hizume, Shizuko Endo, Sachiko Muramatsu, Takehiko Kobayashi and Hiroyuki Araki

Genes & Development 32:1315-1320, 2018 DOI:10.1101/gad.317073.118

細胞分裂に伴って染色体DNAは正確に倍化(複製)され、娘細胞へと分配されます。DNAの複製は染色体上の複数の場所から始まりますが、その後に鋳型となるDNAの傷や、DNAに強固に結合するタンパク質などが障害となり複製が停止したり,複製速度が低下したりすることが知られています。この現象は、染色体の維持と密接に結びついていると考えられていましたが、その機構は分かっていませんでした。今回我々は、鋳型DNAへのタンパク結合により複製が止まる反応を、精製した酵母のタンパク質から試験管内で再構成することに成功しました。そして、この試験管内反応を解析することにより、複製停止機構の一端を明らかにすることができました。DNA複製の最先端では、2本鎖DNAを1本鎖にほどくDNAヘリカーゼが働き、ほどかれた1本鎖DNAを鋳型にしてDNAポリメラーゼがDNA鎖を合成します。鋳型となるDNAにタンパク質が強固に結合していると、ヘリカーゼが止まるものと信じられていましたが、ヘリカーゼはタンパク質が結合していても2本鎖をほどくことができました。しかし、複製に必要なDNAポリメラーゼε(Polε)を加えると結合タンパク質に依存してヘリカーゼの反応が抑制されることが分かりました.これは、ヘリカーゼとDNAを合成するDNAポリメラーゼとが一体となって障害を検知し、対応する機構があることを意味しています。即ち、細胞は染色体上の障害を検知し複製速度を制御することによって的確に障害を乗り越えているのです。

Figure1

図:鋳型DNAにタンパク質(LacI)が強固に結合していると、DNAポリメラーゼε(Polε)が複製ヘリカーゼ(CMG)の活性を抑え複製は停止する。Polεが無いとCMGはタンパク質の結合した鋳型2本鎖DNAをほどき、複製は継続する。

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