明石研究室 進化遺伝研究室 山下 永香 さん

山下 永香

明石研ではどのような研究をしていますか?

明石研ではゲノムの進化のメカニズムについて研究しています。太田朋子先生が提唱された「ほぼ中立説」によると、ゲノム中に起こる変異のほとんどは弱い淘汰圧を受けていると予測します。その弱い淘汰圧を受ける突然変異が生物にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることが研究室の大きな目標です。その中でも、私はショウジョウバエを用いて弱い淘汰圧を受ける突然変異とクロマチン構造の関係を研究しています。

なぜその研究をやろうと思ったのですか?

おそらく私はゲノムそのものが好きなのだと思います。こんなに複雑な生物の遺伝情報がA, T, G, Cという4文字だけで構成されていることに惹かれますし、膨大な量の遺伝情報がクロマチン構造という形で収納されていて、必要なときに形を変えて遺伝情報が読み出されるようになるなんて、なんてクールなシステムなんだと感心しています。そういうゲノムのシステムを作り出した進化の過程を辿ってみたいと思ったので今の研究をしています。最近は、ゲノム全体のクロマチン構造のデータやより精度の高い解析手法など、これから取り入れていけそうな情報がたくさん公表されてきていて、毎日がとても刺激的です。

遺伝研を知ったきっかけは?

東大で毎年7月頃にDBCLSが主催していたNGS解析勉強会に参加していたのがきっかけです。それまで「国立遺伝学研究所」の名前は聞いたことはありましたが、その勉強会で大学院生募集のチラシを見てから意識するようになりました。

どうして遺伝研を選んだのですか?

私は東京農工大学の修士課程に進学した時に博士課程でどこに行こうか探していて、その時の候補の一つが遺伝研の研究室でした。その中で、修士1年生の夏に遺伝研に体験入学をした際に明石先生と初めてお会いしました。先生と研究の話をするうちに「この研究室で研究したい」と思ったので、夏が終わる頃には遺伝研の5年一貫制博士課程を受験することを決めていました。決めた当時の次の2月の入試を受けてその年の4月に総研大に入学しました。そこまで踏み切れたのは明石先生や前の研究室の方々の応援があったからだと思います。修士までの研究を途中でやめて異分野に飛び込んだのは私としては大きな決断でしたが、今のところ全く後悔していません。日々最先端の情報が入ってきますし、自分が新しいスキルを身につけていく実感があって5年を費やす価値があるなと思って研究生活を楽しんでいます。

学生生活はどうですか?

多くの学生が遺伝研宿舎に住んでいるので学生同士で集まる頻度は多いです。留学生とホームパーティーや誕生日会を開いたりして、研究室の垣根を超えてよく集まっています。親しい学生とは月に数回は集まって釣りやスキーに行ったり、週に一回はいろんな人とテニスをして、とても学生らしい生活を送っていると思います。

大学の研究室と比べて違いはありますか?/どんなところが違いますか?

最初に驚いたのは、先生方が自ら実験や解析をしているところです。大学の先生たちは他のことで忙しすぎて実験に集中する時間がないイメージだったので、驚きました。第一線の研究を間近で見ながら学べるのは大学院生にとってとてもいい環境だと思います。

遺伝研の英語教育で役立ったことはなんですか?

科学英語プレゼンの方法論を教える遺伝研メソッドの授業はとても役に立っています。英語で日常会話をする機会はいろんな場所でありますが、英語での研究発表のやり方を教えてもらえるのはとても貴重な体験です。例えば、「日本語特有の起承転結で話しちゃいけない」とか教わるのですが、話すときの根本的な考え方を変えるのは難しくてまだまだ苦戦中です。

遺伝研のオススメってどんなことですか?

大学院生に給料を支給してもらえることだと思います。Research Assistantの対価として年間55万円程支給されます。大学院に進学しようと思った時の一番のネックが生活費だったので、とても助かっています。

キャリアパスが多様化していますが、学位を取得したらどのような道へ進みたいですか?

将来は高校か大学の教員になりたいです。もちろん研究を続けていきたいのですが、研究プラス日本の理科教育の発展にどうにか貢献したいので、今は教員になりたいという気持ちが強いです。卒業するときにはまた考えが変わっているかもしれませんが(笑)。

後輩へのアドバイスは?

気になる研究室があったら直接訪問した方がいいです。遺伝研は体験入学という制度がありますし、他の大学だとしても研究室の先生に直接メールなりでアポをとって訪ねてみるといいと思います。3年や5年という長い時間をその研究室で過ごすことになるので、自分が納得してどうしてもここで研究したいという場所を、入試を受ける前に見つけられると一番いいと思います。
遺伝研内の授業やセミナー、研究発表は全て英語なので不安に思われるかもしれませんが、英語に対するものすごい嫌悪感がなければ大丈夫だと思います(笑)。将来研究者になるとしたら、研究に関して英語でコミュニケーションをとるのは必須だと思うので、早いうちに英語の練習ができる遺伝研はとてもいい環境だと思います。

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