2015/08/21

ゲノム規模SNPデータからみたアイヌ人の特徴と日本列島本土人の成立

集団遺伝研究部門・斎藤研究室

Unique characteristics of the Ainu population in Northern Japan.

Jinam Timothy A, Kanzawa-Kiriyama Hideaki, Inoue Ituro, Tokunaga Katsushi, Omoto Keiichi, and Saitou Naruya.

Journal of Human Genetics. 2015 Jul 16. DOI:10.1038/jhg.2015.79

日本列島には、3種類の人類集団が居住しています;おもに北海道に居住するアイヌ人、おもに琉球諸島に居住するオキナワ人、および列島のあちこちに居住する日本列島本土人。わたしたちは、東京大学との共同研究により、これらの人類集団について、ヒトゲノムの常染色体60万か所に存在する一塩基多型(SNP)データを解析しました。その結果、それぞれ髪の毛と歯、顔面形態に関係する遺伝子(EDARとCOL7A1)の近くに存在するSNPの頻度が、アイヌ人と日本列島本土人のあいだで大きく異なっていることがわかりました(図A)。アイヌ人を縄文人(採集狩猟民)の子孫、大陸のアジア人(中国の漢族と韓国人)を渡来人(農耕民)の子孫と仮定するモデル(図B)を用いると、日本列島本土人における縄文人の遺伝的割合はおよそ20%と推定されました。また両集団の混血は、すくなくとも55世代前、すなわち7世紀にはじまったと推定しました。これらの結果は、アイヌ人が東アジアのなかで独自の系統的位置を占めていることを明確に示しています。

本研究は、総合研究大学院大学の戦略的融合研究から支援を受けました。筆頭著者のJinamは斎藤研究室の助教、共著者の神澤秀明は2014年に総合研究大学院大学遺伝学専攻を修了、井ノ上逸朗は本研究所の人類遺伝研究部門教授です。

Figure1

A)髪の毛と歯、顔面形態に関係する2種類の遺伝子領域に存在するSNPが、アイヌ人と日本列島本土人のあいだで頻度が大きく異なっている様子。
B)日本列島本土人の混血モデル


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