トウモロコシゲノム

トウモロコシは南米原産の作物で、イネ、ムギに次ぐ主要穀類である。特にアメリカにおいては、広大なコーンベルトで作られるコーンは食料、飼料、油糧作物として最重要農作物である。

トウモロコシはまた、遺伝学に置いても幾つかの重要な発見や研究をもたらした。B. McClintockはトランスポゾンの発見により、ノーベル賞を受賞した。染色体を用いた細胞遺伝学的観察は、knobの特徴的構造に助けられ、細胞遺伝学の分野に多くの貢献をもたらしている。

1998年秋、アメリカ科学財団は、植物のゲノム研究への研究費をトウモロコシに絞って投下すると発表した。すでに多くの大学、企業でいろいろの形で始まっているトウモロコシゲノム研究(cDNA解析、ゲノムシークエンシング、ミュータントパネル作成等)が加速されることになった。アメリカでトウモロコシがゲノム研究の中心に据えられた理由は、アメリカにおける主要穀類であると共に、以下の分野の発展に支えられているためと考えられる。

  1. トウモロコシゲノムに先立ってイネゲノム解析が進んだ。トウモロコシゲノム全体はイネゲノムの約6倍の大きさを持つが、イネゲノムが分断化しキメラ状となって4倍体化した構造を持ち、両者の間には非常に高いシンテニー(遺伝子の並びや遺伝子どうしの塩基配列の相同性など)が見られることがわかった。よって、イネゲノム研究のかなりの部分を取り込んで利用できると考えられる。
  2. トウモロコシの内在性トランスポゾンMuによる遺伝子破壊系統の作成が進み、このミュータントパネルを作成することにより、機能未知で塩基配列だけがわかっている遺伝子の機能同定(形質と遺伝子との相関解析)が進むことが、期待されている。
  3. 1996年にミネソタでオート(カラス麦)とトウモロコシを交配し、オートにトウモロコシの個別の染色体が1本ずつ添加された10種類の染色体添加系統が作られた。このことによって、染色体別の解析を非常に有利に展開できるようになった。

作成:倉田のり

トウモロコシのページ(英文のみ)

アイオア州立大学

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