メダカ(ニホンメダカ、学名Oryzias latipes)

メダカニホンメダカ、学名Oryzias latipes)は、ダツ目メダカ科(アドリアニクチス科)に属する、体長4cm程の淡水魚で、小さい群れをなして流れのゆるい小川や水田に生息しています。学名はイネのOryzaに由来し、Oryzias latipes は「イネの周りにいるヒレの広い魚」という意味です。観賞魚として古くから日本人に親しまれており、俳句では夏の季語にもなっています。
緋目高の人来ぬときの高泳ぎ(大堀格花)
緋目高を買ひ来し燈の下にこそ(永井龍男)
しかし、近年では生息可能な環境が減ったためか、ほとんど見かけなくなり、現在では環境省によるレッドデータブックの「絶滅危惧II類」に登録されています。
実験動物としての歴史も長く、飼育が容易で、世代時間が3?4ヶ月と短いこと、さらに、卵が透明で体外受精を行うため発生の極早い時期から観察できることから、遺伝学や発生生物学などの分野で研究に用いられてきています。メンデルの法則の再発見から13年後の1913年には、野生型の黒色がヒメダカのオレンジ色に対して優性でメンデル式遺伝をすることが報告されています。ステロイドホルモンによる性転換や、脊椎動物で初めて動くトランスポゾンの発見、脊椎動物で2例目となる性決定遺伝子の発見など、優れた研究成果がこの魚から生み出されています。さらに、2007年にはゲノム解読に成功し、現在では、遺伝学が可能な数少ない脊椎動物のモデル生物として発展しています。
また、数多くの自然発生突然変異体や、近交系、日本国内各地域の遺伝的に異なるメダカ系統、さらに、東南アジアに広く分布している同属(Oryzias属)の近縁種の系統が、文科省ナショナルバイオリソースプロジェクトのもと、国内の大学および研究所にて維持されています(http://shigen.lab.nig.ac.jp/medaka/参照)。これらの系統はゲノム情報とともに日本の大きな財産です。
詳しくは以下の参考文献、ホームページをご覧ください。

参考文献

江上信雄・山上健次郎(編)(1990)「メダカの生物学」東京大学出版会
岩松鷹司(1997)「メダカ学全書」大学教育出版(分類、形態、生理、発生などを詳細に扱った日本語の優れた教科書)
碓井益雄(2001)「動物の発生」地球社
Iwamatsu, T. (2004). Stages of normal development in the medaka Oryzias latipes. Mech Dev 121, 605-18.
Naruse, K., Hori, H., Shimizu, N., Kohara, Y. and Takeda, H. (2004). Medaka genomics: a bridge between mutant phenotype and gene function. Mech Dev 121, 619-29.

文責:酒井則良

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