2013/07/17

DNA複製のスタート地点の決定における、クロマチンの役割

微生物遺伝研究部門・荒木研究室

Concerted interaction between origin recognition complex (ORC), nucleosomes, and replication origin DNA ensures stable ORC–origin binding
Kohji Hizume, Masaru Yagura, and Hiroyuki Araki
Genes to Cells , 24 JUN 2013 DOI: 10.1111/gtc.12073. [Epub ahead of print]

真核生物のDNAの複製は、染色体上に点在する複製開始点と呼ばれる領域からスタートします。その複製開始点には、origin recognition complex (ORC)と呼ばれるタンパク質複合体が特異的に結合して、複製開始に必要な他のタンパク質が複製開始点に集合する目印となります。これまで、ORCと複製開始点との特異的な結合には、クロマチンが何らかの役割を示していることが示唆されてきましたが、ORCとクロマチンとの結合を試験管内で直接調べ、その役割を明らかにする研究は行われてきませんでした。

私たちは、試験管内再構成したクロマチンとORCとの結合の様子を生化学的に解析し、さらに原子間力顕微鏡(atomic force microscopy, AFM)によるORC–クロマチン複合体の観察を行いました。その結果、複製開始点が裸のDNAであるよりもクロマチンファイバーを形成しているほうが、ORCがより安定かつ特異的に複製開始点に結合することを見出しました。また、ORCの結合は、複製開始点付近のヌクレオソーム配置に変化を促し、複製開始点がリンカーDNA領域となる様子を検出しました。これらのことから、ORCが、リンカーDNAとなった複製開始点と結合し、さらに近傍のヌクレオソームとも結合を確立して、安定かつ特異的なORC–複製開始点結合を確立する仕組みが解りました。

(1) 複製開始点特異的配列(ACS)を含むDNA。
(2) クロマチンを形成させるとACS上にヌクレオソームが配置される。
(3) ORCの添加によりACSがリンカーDNAとなる。
(4) リンカーDNAとなったACS上にORCが結合する。
(5) ORCは、リンカーDNAとなったACS配列との結合と、近傍のヌクレオソームとの結合両方を介して安定に複製開始点と相互作用する。


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