Machine learning-assisted Repli-Histo labeling reveals distinct transcription-dependent constraints on chromatin motion in living cells
Katsuhiko Minami, Kako Nakazato, Kai Shimizu, Sachiko Tamura, Hiroshi Kimura, S. S. Ashwin, Kazuhiro Maeshima*
*corresponding author
Cell Reports DOI: 10.1016/j.celrep.2026.118235
プレスリリース
細胞核の中で、ゲノムDNAはヒストンタンパク質に巻きついてヌクレオソームを形成し、さまざまなタンパク質やRNAとともにクロマチンとして収納されています。クロマチンは静的な構造ではなく、生きた細胞の中ではヌクレオソームが絶えず動いています。これまでの研究から、転写がクロマチンの動きに影響することが知られていましたが( https://rupress.org/jcb/article/218/5/1511/120924/Single-nucleosome-imaging-reveals-loose-genome )、その作用が核内で一様なのか、それともクロマチンの種類や核内の場所によって異なるのかは明らかではありませんでした。
国立遺伝学研究所 ゲノムダイナミクス研究室の南克彦 特任研究員(元 総合研究大学院大学(総研大)大学院生、現 米ハーバード大学研究員)、仲里佳子 総研大大学院生(日本学術振興会特別研究員DC2)、清水開 総研大大学院生、田村佐知子 テクニカルスタッフ、前島一博 教授らの研究グループは、東京科学大学の木村宏 教授、インド・GITAM大学のS. S. Ashwin 准教授と共同で、機械学習を導入したRepli-Histo標識法と1分子ヌクレオソームイメージングを組み合わせ、生きたヒト細胞で異なるクロマチンクラスの動きを解析しました(図1)。
Repli-Histo標識法は、DNA複製のタイミングを利用して、クロマチンをユークロマチンに相当するクラスIA、IBと、ヘテロクロマチンに相当するクラスII、IIIに分類して可視化する方法です(Minami et al., Science Advances, 2025; https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adu8400 )。今回、研究グループは機械学習による画像分類を導入し、4つのクロマチンクラスを客観的に分類しました。さらに1分子ヌクレオソームイメージングを組み合わせることで、それぞれのクラスにおけるヌクレオソームの動きを直接解析しました。その結果、ユークロマチンからヘテロクロマチンに向かうにつれて、ヌクレオソームの動きが次第に強く抑えられていることが分かりました(図1)。
次に、主にタンパク質をコードする遺伝子を転写するRNAポリメラーゼII(Pol II)を3種類の異なる阻害剤で阻害すると、ユークロマチン(クラスIA、IB)と核小体周辺のヘテロクロマチンでヌクレオソームの動きが増加しました。一方、核膜周辺のヘテロクロマチンではほとんど変化が見られませんでした。これに対して、主に核小体でリボソームRNAを転写するRNAポリメラーゼI(Pol I)を阻害すると、核小体周辺のクラスIIIヘテロクロマチンで選択的にヌクレオソームの動きが増加しました(図2)。
これらの結果は、転写が核全体のクロマチンを一様に制御するのではなく、Pol IIとPol Iという異なる転写システムが、クロマチンの種類と核内での位置に応じてその物理的なふるまいを異なる形で制御していることを示しています。特に、核小体周辺のヘテロクロマチンが物理的にも均一ではなく、複数の転写システムによって異なる形で制御されていることが明らかになりました。
今回開発した機械学習を用いたRepli-Histo標識と1分子ヌクレオソームイメージングの組み合わせにより、今後、転写だけでなく、さまざまな核内機能が特定のクロマチン領域の物理的なふるまいをどのように制御しているのかを調べることが可能になると思われます。さらに、転写や核小体機能の異常は、がんをはじめとするさまざまな疾患と関係することが知られています。今回明らかになった転写依存的なクロマチン運動制御の仕組みをさらに理解することで、疾患細胞において核内クロマチンの物理的な状態がどのように変化するのかを明らかにする手がかりになると期待されます。
本研究は、日本学術振興会(JSPS)および文部科学省科研費(JP24H00061、JP25K24664)、武田科学振興財団、JST SPRING(JPMJSP2104)、日本学術振興会特別研究員制度(JP23KJ0998、JP26KJ1223)、日本学術振興会海外特別研究員制度、山田科学振興財団の支援を受けて行われました。先進ゲノム支援(JP22H04925(PAGS))のシークエンス・解析サポートを受けました。

図1:機械学習を用いたRepli-Histo標識と1分子ヌクレオソームイメージングの概要
Repli-Histo標識による核内画像を機械学習で解析し、クロマチンをユークロマチン(クラス IA、IB)からヘテロクロマチン(クラス II、III)まで4つのクラスに分類した。さらに、各クラスで1分子ヌクレオソームイメージングを行い、ヌクレオソームの動きを解析した。

図2:RNAポリメラーゼIとIIによるクロマチン運動の異なる制御
Pol II阻害では、ユークロマチン(クラス IA、IB)と核小体周辺のヘテロクロマチンでヌクレオソームの動きが増加したが、核膜周辺のヘテロクロマチンでは変化しなかった。一方、Pol I阻害では、核小体周辺のクラスIIIヘテロクロマチンで選択的にヌクレオソームの動きが増加した。これらの結果は、Pol IとPol IIによる転写が、異なるクロマチンクラスと核内領域の動きをそれぞれ制御していることを示す。
Repli-Histoで標識した生きたヒト細胞のクラスIAクロマチン(左)と個々のヌクレオソームの動き(右)。1個1個のヌクレオソームが揺らいでいる。