NIG SAKURA

■なぜ遺伝研に桜があるの?
遺伝研の桜は、1950年頃、植物遺伝学者の竹中要博士が研究と品種保存を目的に収集・植樹したことに始まります。博士は10年以上にわたる研究により、染井吉野がオオシマザクラとエドヒガンの雑種であることを突き止めました。当時の遺伝学は主に交配と観察に頼っていたため、この発見には長い年月を要しました。近年では、コンピューターを用いたゲノム分析技術により、博士の結論が遺伝子レベルでも裏付けられ、染井吉野のDNA配列の多くがエドヒガンとオオシマザクラに由来することが確認されています。現在、遺伝研では桜の様々な品種のゲノムを明らかにする研究がスタートしました(研究者インタビュー記事、リサーチハイライト記事)。このように、研究者たちの情熱は遺伝研の桜となって、私たちの目を楽しませ続けています。
桜について
- 遺伝研にある珍しい桜ってどんなのがあるの?
- 花弁が黄色や緑色をした「鬱金(右近)」や「御衣黄」と呼ばれる品種があります。開花時期が4月下旬のため、一般公開の時期には滅多にみることができません。花弁が緑色に見える理由は、花弁に葉緑体が豊富に存在するからです。
- 遺伝研にはどのくらいの桜があるの?
- 遺伝研には現在約230種類・約650本の桜があります。近年、大きくなった桜の枝が重なることによる日光不足が原因で枯れてしまう種類があるため、剪定などの手入れをおこなっています。
- 遺伝研の桜の見ごろはいつ?
- 1月下旬〜2月初旬頃に咲き出す熱海桜からゴールデンウィーク頃に咲く八重桜など、遺伝研には約230種類の桜があるため開花の時期はまちまちです。 すべてが満開になるタイミングはありませんが、例年一般公開の時期は多くの種類の桜が咲きます。 一般公開にお越しになった際は、花の色や咲き方などひとつひとつの桜の違いをゆっくり観察してみてはいかがでしょうか。
- 桜はどうやって増やすの?
- 「挿し木」や「接ぎ木」の方法を用いるのが一般的です。
- 遺伝研の桜は誰が面倒を見ているの?
- 遺伝研構内の桜の管理は公益財団法人 遺伝学普及会に委託しています。樹木医や職員が状態を確認したり、草を刈るなど細やかな手入れをしています。また遺伝研には「遺伝研さくらの会」というボランティアグループがあり、桜を管理する活動も行っています。
- 三島桜ってなに?
- 三島桜(ミシマザクラ)は遺伝研がある静岡県三島市の花です。この桜は、竹中要博士による染井吉野の起原を探る研究の過程で発見されました。ちょうど完成した三島市庁舎を祝い、名付けられたそうです。
- なんで染井吉野は一斉に咲くの?
- 染井吉野は、挿し木や接ぎ木でしか増やせないため、どの木も遺伝的に同じ性質を持ったクローンとなります。そのため、気象条件が同じ地域では、一斉に開花するのです。
染井吉野が挿し木や接ぎ木でしか増やせないのは、自家不和合性があるためです。 自家不和合性とは、S遺伝子型がオス(花粉)とメス(雌しべ)で全く同じ組み合わせの場合、受粉しても受精に至らず、種子が実らない現象です。 クローン同士だとS遺伝子も全く同じなので、染井吉野の種子は得られない、すなわち実生で染井吉野を育てることはできません。
- 染井吉野は、挿し木や接ぎ木でしか増やせないため、どの木も遺伝的に同じ性質を持ったクローンとなります。そのため、気象条件が同じ地域では、一斉に開花するのです。

■写真付き解説書「遺伝研のさくら」
遺伝研の桜は現在、公益財団法人 遺伝学普及会が管理しています。また、一般公開当日に写真付き解説書「遺伝研のさくら」第6版を頒布しています。(頒布場所は当日配布のリーフレットでご確認ください。)
「遺伝研のさくら」では遺伝研構内に生育している桜樹木について、正門から順番に、写真と説明文を掲載しています。