前島研究室・ゲノムダイナミクス研究室
鐘巻研究室・分子細胞工学研究室
Average local nucleosome motion remains nearly constant during interphase in living human cellsLinker histone H1 functions as a liquid-like glue to organize chromatin in living human cells
Yu Nagata, Shiori Iida, Masa A. Shimazoe, Sachiko Tamura, Kako Nakazato, Kai Shimizu, Yuki Hatoyama, Masato T. Kanemaki and Kazuhiro Maeshima *
*corresponding author
Journal of Cell Science DOI: 10.1242/jcs.265367
細胞核内のゲノムDNAはヒストンタンパク質に巻き付いてヌクレオソームを形成し、他のタンパク質・RNAと共にクロマチンとして収納されています。間期の進行につれてDNA量が約2倍に増加し、核の体積も大きくなります。その一方で、転写、DNA複製、DNA修復などの基本的なゲノム機能も遂行されます。こうした間期の大きな変化の中で、クロマチンの局所的な物理状態がどのように保たれているのかは、十分に分かっていませんでした。
国立遺伝学研究所 ゲノムダイナミクス研究室の長田侑 総合研究大学院大学大学院生(総研大生)、飯田史織 特任研究員(現 独マックス・プランク分子生物医学研究所 博士研究員)、島添將誠 総研大生(学振特別研究員DC1)、田村佐知子 テクニカルスタッフ、仲里佳子 総研大生(学振特別研究員DC2)、清水開 総研大生、前島一博 教授の研究グループは、分子細胞工学研究室の鐘巻将人教授らのグループと共同で、一分子ヌクレオソームイメージングとFucci細胞周期プローブを組み合わせ、薬剤による細胞周期同調を行わないヒトHeLa細胞を用いて、間期を通じたヌクレオソームの動きを解析しました。その結果、G1期、S期、G2期を通じて、平均的なヌクレオソームの動きがほぼ一定に保たれることを明らかにしました。
研究グループは、コアヒストンH2B-Haloを用いて個々のヌクレオソームを追跡し、Fucci細胞周期プローブによって細胞周期を判定しました。その結果、G1期、S期、G2期を通じて平均的なヌクレオソームの動きはほぼ一定に保たれていました(図)。この結果は、薬剤処理で細胞周期を高度に同調した細胞を用いた本研究グループの先行研究(Iida et al., Science Advances, 2022; https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn5626)と一致しています。さらに、遺伝子がよく転写される領域であるユークロマチンに濃縮するヒストンバリアントH3.3を標識して解析したところ、H3.3-HaloヌクレオソームはH2B-Haloヌクレオソームよりも大きな動きを示しましたが、その動きも間期を通じてほぼ一定でした(図)。また、ヒトHCT116細胞でも同様の結果が得られました。
一方、ヌクレオソームの動きは、転写阻害、複製ストレス、DNA損傷によって増加しました (図)。これらの結果は、細胞がDNA量や核体積が大きく変化する間期においても、局所クロマチンの動きをほぼ一定に維持しながら、必要に応じてその動きを変化させることを示しています。つまり、間期クロマチンは、転写、DNA複製、DNA修復などの日常的なゲノム機能に対し、安定した物理的環境を提供していることが示されました。
本研究は、日本学術振興会(JSPS)および文部科学省科学研究費助成事業(JP24H00061、JP25K24664)、武田科学振興財団、日本学術振興会特別研究員制度(JP24KJ1161、JP26KJ1223)、ならびに情報・システム研究機構(ROIS)の支援を受けて実施されました。また、先進ゲノム支援 (JP22H04925 (PAGS))のシークエンス・解析サポートを受けています。

H2B-Haloヌクレオソームの平均的な動きは、間期にDNAの量や核の体積が増加するにもかかわらず、G1期からG2期までほぼ一定に保たれます。遺伝子がよく転写される領域であるユークロマチン中のH3.3-Haloヌクレオソームは、H2B-Haloヌクレオソームよりも大きな動きを示しますが、この動きの差も間期を通じて維持されます。ヌクレオソームの動きは、DNA損傷、複製ストレス、転写阻害などの摂動によって一時的に増加します。この「ほぼ一定だが調節可能」な動きは、間期を通じてさまざまなゲノム機能を支える安定した物理的環境の維持に寄与していると考えられます。
HeLa細胞における、H2B-Halo(左)とH3.3-Halo(右)で標識したヌクレオソームの動き。ユークロマチンのヌクレオソーム(H3.3-Halo)の方が、H2B-Haloヌクレオソームよりも大きな動きを示す。