Visceral Fat Deposition and Lipidome Responses to a Nutrient-Rich Diet in the Japanese Three-Spined Stickleback (Gasterosteus aculeatus)
Bo-Jyun Chen, Yo Y. Yamasaki, Seiichi Mori, and Jun Kitano
Zoological Science 43(5), 2026 DOI:10.2108/zs260013
動物が利用できる栄養は、生息環境によって大きく異なります。一般に、淡水の餌環境は海に比べてエネルギーやドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂質に乏しいことが知られています。しかし、海と淡水に生息する魚の間で、余剰なエネルギーを脂肪として蓄える仕組みや、摂取したDHAの利用方法が異なるかどうかは、よく分かっていませんでした。
そこで、生態遺伝学研究室のBo-Jyun Chenさん(総研大生)と北野潤教授を中心とする研究グループは、北海道の海型イトヨと岐阜県の河川型イトヨ(ハリヨ)を、栄養の乏しい餌または栄養豊富な餌で飼育しました。そして、成長、内臓脂肪、および全身の脂質組成を比較しました。
栄養豊富な餌は、海型と河川型の両方で成長を促進しました。一方、河川型では栄養豊富な餌によって内臓脂肪が一貫して増加したのに対し、海型では家系によって反応が異なりました。リピドーム解析によって脂質を網羅的に調べたところ、栄養豊富な餌によって、細胞膜を構成するリン脂質に含まれるDHAの割合が増加しましたが、この応答は海型と河川型で概ね共通していました。
今回比較した集団と家系の範囲では、海型と河川型の分化は、脂質代謝経路全体の大きな変化よりも、余剰なエネルギーを内臓脂肪として蓄える戦略の違いに表れている可能性が示されました。本研究は、異なる栄養環境への適応が魚類のエネルギー貯蔵の仕組みをどのように進化させるのかを理解するための基盤となります。
本研究は、科研費(22H04983)、JST CREST(JPMJCR20S2)、および日本台湾交流協会奨学金の支援を受けて実施されました。

岐阜県の河川に生息するハリヨ(写真:秦康之)