ヒト集団ゲノム研究室
河合研究室
大規模なゲノム解析を通じて人類の多様性を理解する
教員

Research Summary
1. ヒトのゲノムデータ解析
私たちは、全ゲノムシーケンス(WGS)を中心としたヒトゲノムデータの解析手法の開発と応用に取り組んでいます。大規模データを安定かつ再現性高く処理するために、データ前処理からバリアント検出、アノテーションに至るまでの一連のワークフローの設計・実装・最適化を行っています。特に、短鎖リードおよび長鎖リードシーケンス、Hi-Cなどの多様なデータを統合した解析基盤の構築に注力しており、構造変異や複雑なゲノム領域の高精度な解析を可能にします。近年では、テロメアからテロメアまで連続した配列を持つT2T(Telomere-to-Telomere)ゲノムの解析にも取り組んでおり、これまで未解読であった反復領域やセントロメア領域を含めた包括的なゲノム理解を目指しています。
また、大規模コホートに対応したスケーラブルな解析パイプラインや、高速かつメンテナンス性の高いソフトウェアの開発を通じて、研究から臨床応用まで幅広く利用可能な基盤技術の確立を目指しています。
2. 人類の進化
ヒトゲノムに記録された遺伝的多様性を手がかりに、人類の進化と集団の歴史を解明する研究を行っています。現代人および古代人のゲノムデータを用いて、集団の分岐や混合、移動の歴史を明らかにするとともに、集団遺伝学的手法を用いて遺伝的多様性の形成過程を解析します。特に、遺伝子頻度の変化や自然選択の痕跡、遺伝子流動のパターンなどを解析することで、環境適応や文化的背景と遺伝的変化の関係を理解することを目指しています。これにより、人類の進化史の再構築だけでなく、現代集団に見られる遺伝的特徴の成り立ちを明らかにします。
3. ゲノム医学研究
ゲノム情報を活用した疾患研究を推進し、精密医療の実現に貢献することを目指しています。特に、希少遺伝性疾患を対象とした全ゲノム解析を中心に、疾患関連バリアントの同定や解釈に取り組んでいます。国の大規模ゲノム解析プロジェクトや臨床研究との連携のもとで進められており、多数の症例データと臨床情報を統合した解析が可能となっています。こうした大規模データを基盤として、疾患の分子機構の解明や診断精度の向上、新たな治療戦略の創出を目指します。さらに、生活習慣病などの多因子疾患に対しては、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いて疾患感受性に関与する遺伝的要因の同定を行っています。大規模コホートデータを活用することで、個々の遺伝的背景に基づいたリスク評価や疾患予測の高度化を目指しています。
また、日本人集団に特化したゲノムデータベースや解析基盤の整備を通じて、研究成果を医療現場へ還元し、ゲノム医療の社会実装を推進しています。

出版物
- Kulmanov M, Ashouri S, Liu Y, Abdelhakim M, Alsolme E, Nagasaki M, Ohkawa Y, Suzuki Y, Tawfiq R, Tokunaga K, Katayama T, Abedalthagafi M.S, Hoehndorf R, Kawai Y. Phased genome assemblies and pangenome graphs of human populations of Japan and Saudi Arabia. Sci Data 2025: 12, 1316.
- Kawai Y, Watanabe Y, Omae Y, Miyahara R, Khor S-S, Noiri E, Kitajima K, Shimanuki H, Gatanaga H, Hata K, Hattori K, Iida A, Ishibashi-Ueda H, Kaname T, Kanto T, Matsumura R, Miyo K, Noguchi M, Ozaki K, Sugiyama S, Takahashi A, TokudaH ,Tomita T, Umezawa A, Watanabe H, Yoshida S, Goto Y, Maruoka Y, Matsubara Y, Niida S, Mizokami M, Tokunaga K. Exploring the genetic diversity of the Japanese Population: Insights from a Large-Scale Whole Genome Sequencing Analysis. PLoS Genet 2023: 19(12): e1010625.
- Kawai Y, Hitomi Y, Ueta M, Khor SS, Nakatani K, Sotozono C, Kinoshita S, Nagasaki M, Tokunaga K. Mapping of susceptible variants for cold medicine-related Stevens–Johnson syndrome by whole-genome resequencing. npj Genomic Medicine. 2021;6(1):9-.
- Jinam T, Kawai Y (1st coauthor), Kamatani Y, Sonoda S, Makisumi K, Sameshima H, Tokunaga K, Saitou N. Genome-wide SNP data of Izumo and Makurazaki populations support inner-dual structure model for origin of Yamato people. Journal of Human Genetics. 2021;66(7):681-7.
- Kawai Y, Mimori T, Kojima K, Nariai N, Danjoh I, Saito R, Yasuda J, Yamamoto M, Nagasaki M. Japonica array: improved genotype imputation by designing a population-specific SNP array with 1070 Japanese individuals. Journal of Human Genetics. 2015;60(10):581-7.