Date: 2026/8/6 10:00-11:00
Place: 研究本館3階セミナー室(A316)Seminar Room – Main Building 3F (A316)
Speaker: 加藤 遼
Institution: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 電子光科学領域
Title: 多彩な分光技術による階層的分子科学
Summary: 物質の機能や生命現象の機序も、突き詰めれば分子の構造・配置・相互作用に行き着く。分子そのものを直接視ることができれば、現象の本質に迫れる。これまでに、私は分子の声を聞くために、光と分子の相互作用から生じる光学応答を計測する顕微技術開発とその応用を進めてきた。本講演では、ラマン分光や中赤外分光などの振動分光学的手法と非線形光学イメージングを駆使し、単分子から細胞集団、結晶材料へと至る異なる階層の対象における基礎科学を分子の観点から解き明かす筆者の取り組みを紹介する。
ナノスケールでは、チップ増強ラマン分光(TERS)により、バイオセンサーのホスト材料として期待される二次元材料上に自己組織化した単分子生体材料の二次構造や分子配向を明らかにした1。細胞スケールでは、独自に開発した超解像中赤外(MIP)顕微鏡を用い、藍藻バイオフィルムを組織化する細胞外分子(硫酸多糖など)をサブミクロン分解能で可視化し、バイオフィルム形成機構に重要な細胞の自己集合に関する新たな知見を得た2。さらに同手法を歯科結晶材料の解析へと展開し、歯科接着科学における新たな発見に繋がった3。バルクスケールの解析では、自発偏光ラマン・二光子蛍光・第二高調波発生を組み合わせた多角的解析により、有機結晶の相転移に伴う分子配向とキラリティの変化を捉えた4。これら階層を貫く分子計測が、対象の基礎科学に迫る強力な手がかりとなることを示す。
Chair person: 鳥井 孝太郎
*(Japanese seminar)
Note: 参考文献
1. BioRxiv. (2024)/Nanoscale (to be submitted)
2. Analyst, 148 (2023)
3. Opt. Commun, 591 (2025)
4. ChemRxiv. (2026)/ Nature Communications (under review)