研究成果

【プレスリリース】「光で動作する人工網膜」を開発――微小太陽電池と立体カーボン電極を組み合わせたデバイスによって網膜の活性化に成功

多階層感覚構造研究室(研究当時)

Photovoltaic Stimulation of Mouse and Pig Retina With Pyrolytic Carbon Microelectrodes Integrated on High-Density Silicon Solar Cell Arrays

Akihiro Matsumoto, Pratik Kusumanchi, Jesper Guldsmed Madsen, Asbjørn Cortnum Jørgensen, Gisele Alves dos Reis Benatto, Sune Thorsteinsson, Peter Behrensdorff Poulsen, Keisuke Yonehara, Toke Bek, Stephan Sylvest Keller, Rasmus Schmidt Davidsen

Advanced Healthcare Materials DOI: https://doi.org/10.1002/adhm.71651

プレスリリース

 視覚系の感覚器官である網膜では、視細胞が、外界の光を神経信号である電気信号に変換してくれています。網膜色素変性症などの視覚疾患では、その視細胞が失われてしまうことで、脳が光についての電気信号を受けとることができなくなってしまいます。そうした視覚疾患に対する治療法の一つが、「光起電力型人工網膜(photovoltaic retinal prosthesis)」です。これは、微小な太陽電池を利用することで眼にはいる光を電気エネルギーに変換し、その電気刺激によって網膜に残存する神経細胞を活性化することで、失われた視覚機能の回復を目指す技術です。

 今回、国立遺伝学研究所の松本彰弘助教、米原圭祐教授、オーフス大学のRasmus Schmidt Davidsen助教、オーフス大学大学病院眼科Toke Bek教授、デンマーク工科大学のStephan Sylvest Keller教授らによる国際共同研究グループは、微小なシリコン太陽電池と熱分解カーボンからなる立体的な3次元電極を高密度に集積した、新しい光起電力型人工網膜を開発しました。近赤外光を照射して発生させた電気刺激により、摘出したマウスやブタ網膜において神経活動を誘発できることを実証しました。本成果は、「微小太陽電池とカーボン電極を組み合わせた立体構造」の有効性を示すものであり、将来的な視覚機能の再建に向けた人工網膜の高性能化につながることが期待されます。

【研究体制】本研究は、国立遺伝学研究所(松本彰弘助教、米原圭祐教授)、オーフス大学(Rasmus Schmidt Davidsen助教)、デンマーク工科大学(Pratik Kusumanchi大学院生、Stephan Sylvest Keller教授)、オーフス大学大学病院眼科(Jesper Guldsmed Madsen研究員、Toke Bek教授)らを中心とする国際協同チームによって行われました。

微小太陽電池と3次元カーボン電極で構成される光起電力型人工網膜