イベント概要

国立遺伝学研究所では、若手研究者の育成と新分野創造を大学共同利用機関の使命として、若手トップクラスの人材を任期付独立准教授として新分野創造センターに採用し、研究費サポート、メンターによる育成・支援を行ってきました。 さらに、科学技術人材育成費補助金「テニュアトラック普及・定着事業」の支援を受け、それらのサポート体制を継続・発展させているところです。 この度、新分野創造センター創立10周年を迎えることができ、その記念行事としてシンポジウムを開催することとなりました。未来ある若手教員の活動紹介と、今後の遺伝学研究の普及の場になればと存じます。

開催概要

日時 2016年8月29日(月)13:00~18:00(開場 12:00)
参加費 無料
場所 東京大学 本郷キャンパス 小柴ホール
アクセス
  • 本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線)徒歩10分
  • 本郷三丁目駅(地下鉄大江戸線)徒歩10分
  • 湯島または根津駅(地下鉄千代田線)徒歩10分

プログラム

スケジュール

司会進行
相賀 裕美子 教授
(国立遺伝学研究所 新分野創造センター長)

第一部

13:00 開会挨拶 桂 勲 所長(国立遺伝学研究所)
13:05 来賓講演 豊田 政男 名誉教授(大阪大学)
13:20 講 演 細胞建築学の創造にむけた挑戦
木村 暁 教授(国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター 細胞建築研究室)
13:50 講 演 真核細胞とミトコンドリア・葉緑体の協調増殖機構
宮城島 進也 教授(国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究系 共生細胞進化研究部門)
14:20 講 演 細胞核と紡錘体のマイクロメカニクス
島本 勇太 准教授(国立遺伝学研究所 新分野創造センター 定量メカノバイオロジー研究室)

第二部

14:55 講 演 木部道管分化にみる細胞の自立的な空間パターン形成
小田 祥久 准教授(国立遺伝学研究所 新分野創造センター 細胞空間制御研究室)
15:15 講 演 脳神経回路のスクラップ&ビルドと動的脳機能制御
榎本 和生 教授(東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 脳機能学研究分野)
15:45 講 演 オーキシンデグロン技術がもたらす新たなヒト細胞遺伝学
鐘巻 将人 教授(国立遺伝学研究所 分子遺伝研究系 分子細胞工学研究部門)

第三部

16:30 講 演 1万個の細胞集団が作り出す螺旋状信号波の自己組織化原理
堀川 一樹 教授(徳島大学 医歯薬学研究部 光イメージング研究分野)
17:00 講 演 進化的に保存された中心小体複製の基本原理
北川 大樹 教授(国立遺伝学研究所 分子遺伝研究系 中心体生物学研究部門)
17:30 講 演 トゲウオ適応放散の分子遺伝機構
北野 潤 教授(国立遺伝学研究所 集団遺伝研究系 生態遺伝学研究部門)
18:00 閉会挨拶 相賀 裕美子 教授

講演内容

木村 暁 教授

講演1 細胞建築学の創造にむけた挑戦

木村 暁 教授
(国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター 細胞建築研究室)

2002年東大大学院理学系研究科修了(理学博士)。2002年慶應大特別研究助手。 2006年遺伝研新分野創造センター准教授、2015年より現職。細胞内空間の設計図を明らかにすべく、細胞建築の構造計算に取り組んでいます。

2006年に「細胞建築研究室」という名前の研究室をスタートして、10年が経ちました。細胞は生命の最小単位であり、生命らしさの基本がつまっています。 私たちは、細胞内の秩序だった空間構成に魅せられ、どうやって一見無秩序な分子の集団から、細胞という見事な建築物ができあがるのかを明らかにする「細胞建築学」の創造をめざして研究をすすめてきました。 頭脳も目も持たない分子の集団が、空間の長さを測り、核などの構造物の大きさを調節して細胞を建築するしくみについてお話しします。

宮城島 進也 教授

講演2 真核細胞とミトコンドリア・葉緑体の協調増殖機構

宮城島 進也 教授
(国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究系 共生細胞進化研究部門)

2002年東大大学院理学系研究科修了(理学博士)、PD。2003年立教大理学部PD、ミシガン州立大PD。2006年理研独立主幹研究ユニット ユニットリーダー。 2011年遺伝研新分野創造センター特任准教授、2015年より現職。様々な光合成真核生物の生き様に惹かれ、細胞内共生の成立・維持機構の解明に向けて研究中。

真核細胞内のエネルギー変換器、ミトコンドリアと葉緑体はそれぞれ、10-20億年前にプロテオバクテリア、シアノバクテリアが真核細胞内に共生することによって誕生した。 恒久的な共生関係が成立するためには、宿主である真核細胞と共生体細胞が協調的に増殖する必要があるが、その機構は不明であった。 本講演では我々の最近の研究で明らかとなった、宿主と共生体がお互いに制約を掛け合うことによる、宿主・共生体(オルガネラ)の協調増殖機構について紹介する。

島本 勇太 准教授

講演3 細胞核と紡錘体のマイクロメカニクス

島本 勇太 准教授
(国立遺伝学研究所 新分野創造センター 定量メカノバイオロジー研究室)

2007年早稲田大大学院理工学研究科修了(理学博士)。2008年ロックフェラー大PD。 2008年上原記念生命科学財団フェロー、2010年JSPS海外特別研究員、2012年JSTさきがけ兼任研究者、2014年 より現職。 細胞のメカノセンシング機構について、紡錘体と細胞核に焦点を当てた研究を進めている。

私たちの体を形づくる細胞は、力を初めとする多くの物理的ストレスにさらされながらその役割を果たしています。 紡錘体や核などの細胞内構造は、このような力の摂動に対して高い安定性を保ちながら正確かつ柔軟に機能する必要がありますが、そのメカニズムはほとんど分かっていません。 今回の講演では、当研究室が得意とする力学操作技術と蛍光イメージング顕微鏡によって明らかになった、細胞のしなやかでロバストな力学応答のしくみについてお話する予定です。

小田 祥久 准教授

講演4 木部道管分化にみる細胞の自立的な空間パターン形成

小田 祥久 准教授
(国立遺伝学研究所 新分野創造センター 細胞空間制御研究室)

2007年東大大学院新領域創成科学研究科修了(生命科学博士)。2007年東大大学院理学系研究科学振PD、2010年研究員、2011年助教、2014年より現職。 顕微鏡下に見える細胞の精細な構造とダイナミクスに感動し研究者を目指す。独自の細胞培養系を武器に細胞が形を作り出す仕組みを明らかにするべく日々奮闘している。

生物の体は実に様々な形の細胞で作られている。細胞はどのようにして形の設計図となる空間的な情報を細胞内に構築するのだろうか。 これまでに幾何学的な細胞壁パターンを作り出す木部道管細胞をモデルとして、低分子量GTPaseを中心とした相互作用ネットワークが細胞内で自律的に空間パターンを形成していることを明らかにしてきた。 本講演ではこの成果について最新の知見を交えて紹介したい。

榎本 和生 教授

講演5 脳神経回路のスクラップ&ビルドと動的脳機能制御

榎本 和生 教授
(東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 脳機能学研究分野)

1997年東大大学院薬学系研究科修了(薬学博士)。1997年東京都臨床医学総研研究員、2002年カリフォルニア大サンフランシスコ校ハワードヒューズ医学研客員研究員、 2006年遺伝研新分野創造センター独立准教授、2010年大阪バイオサイエンス研研究部長、2013年より現職。生物の個性や心を生み出す脳の作動原理を理解したいと考えています。

私どもの研究室は、脳が心や個性を生み出すメカニズムに興味をもち研究を行っています。本講演では、生物が環境変化や発達にともない脳神経回路の構造や機能を変化させる仕組みについて議論させて頂きます。

鐘巻 将人 教授

講演6 オーキシンデグロン技術がもたらす新たなヒト細胞遺伝学

鐘巻 将人 教授
(国立遺伝学研究所 分子遺伝研究系 分子細胞工学研究部門)

2001年千葉大大学院自然科学研究科修了(理学博士)。2001年Cancer Research UK・PD。2006年大阪大理学研究科生物科学専攻助教。 2010年遺伝研新分野創造センター准教授、2016年より現職。新たな遺伝学技術開発を進めるとともに、それらを使ってヒト細胞のゲノム安定維持メカニズム解析にも奮闘中。

私たちの研究室は、2009年にオーキシンデグロン(auxin-inducible degron: AID)法を開発しました。 この技術は植物が持つオーキシン依存分解系を、異種生物に移植することで、オーキシン添加時に標的タンパク質を迅速に分解除去することを可能にします。 AID法は当初出芽酵母において確立されましたが、私たちはCRISPR/Casゲノム編集技術を応用することで、ヒト細胞においても利用することを可能にしました。 本技術により、ヒト細胞のタンパク質機能が、これまでにない精度で解析可能になります。研究の経緯とデグロン技術がもたらす、新たな細胞遺伝学についてお話ししたいと思います。

堀川 一樹 教授

講演7 1万個の細胞集団が作り出す螺旋状信号波の自己組織化原理

堀川 一樹 教授
(徳島大学 医歯薬学研究部 光イメージング研究分野)

2002年京大大学院理学研究科修了(理学博士)。2002年東大理PD、2005年助教。2006年北大電子研特任准教授、兼さきがけ研究員。2010年遺伝研新分野創造センター准教授、2012年より現職。 細胞集団の振動・同期・波を世界最高の精度と規模で可視化することで、社会のありように迫るべく、細胞や分子のツブツブを数える毎日。

細胞性粘菌は走化性因子cAMPを細胞間リレーさせ、螺旋波状の走化性集合流を自己組織化させるが、その最大の謎に「対称性の破れ問題」があげられる。 初期状態では存在しない化学信号がどのように生じるのか?(=時間対称性の破れ)、マクロな秩序構造のうち空間非対称性をもつ螺旋波の形成機構は何であるか?(=空間対称性の破れ) という問題にせまるため、信号伝達動態を1細胞/1分子粒度にて大規模解析した研究結果を紹介する。

北川 大樹 教授

講演8 進化的に保存された中心小体複製の基本原理

北川 大樹 教授
(国立遺伝学研究所 分子遺伝研究系 中心体生物学研究部門)

2005年東大大学院薬学系研究科修了(薬学博士)。2006年スイス実験癌研究所PD。2011年遺伝研新分野創造センター特任准教授、2015年より現職。 中心体複製の原理解明に理論、実験の両面から迫るとともに、中心体を標的にした次世代型抗がん剤の開発に挑んでいる。

当研究室では、真核細胞において微小管形成中心として機能する細胞小器官である中心小体の複製に介在する基本原理の理論構築、分子機構の解析を進めています。 「半保存的」「1細胞周期に1コピー」とDNA複製との共通項がありながら、複製システムとしては全く異なるメカニズムが推測されます。 これまでの解析から、中心小体構築の初期過程における分子間相互作用が中心小体の複製を1コピーに制限するのに重要であることを明らかにしてきました。 本講演では、中心小体複製の原理を説明しうるいくつかのモデルに関して議論します。

北野 潤 教授

講演9 トゲウオ適応放散の分子遺伝機構

北野 潤 教授
(国立遺伝学研究所 集団遺伝研究系 生態遺伝学研究部門)

2002年京大大学院医学研究科修了(医学博士)。2003年フレッドハッチンソン癌研究所PD、2009年東北大大学院生命科学研究科助教、 2011年遺伝研新分野創造センター特任准教授、2015年より現職。地道な野外生物の観察をベースにしつつ、新しい進化遺伝理論を世界に発信するべく奮闘中。

どのようにして新たな種が生まれるのか。生き物がどのようにして多様な環境に適応していくのか。 私の研究室では、生物多様性進化を巡るこれらの問いに対して、おもにトゲウオ科魚類を用いながら迫ります。 表現型に関わる遺伝子は、実験モデル生物において多く同定されてきましたが、野外生物における種分化や適応進化の分子機構の多くは未解明です。 また、原因対立遺伝子が野外集団内でどのように広まっていくのかについても多くが未解明です。 これらを解明するために、フィールド調査から始まり、ゲノミックスや遺伝子工学、生態実験などを統合的に用います。 現在、最も重点を置いているテーマは、単純な自然選択による適応進化のモデルでは説明できないような性的二型の進化、 染色体構造の変化、適応能力の限界、雑種不妊などの原因となる遺伝子及び変異の特定などです。 本講演では、これらの中からいくつか最新の知見を紹介します。

参加について

参加無料です。申し込みは不要ですので、当日直接会場にお越し下さい。

お問い合わせ

大学共同利用機関法人 情報 ・システム研究機構 国立遺伝学研究所 研究推進チーム

住所 〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
TEL 055-981-6712
E-Mail resup-mail@nig.ac.jp