
手塚 拓海(てづか たくみ)
総合研究大学院大学・遺伝学専攻5年一貫制博士課程4年次(D4)
佐藤研究室 植物遺伝研究室
遺伝研を知ったきっかけは?
佐藤研で行われている植物の初期発生の研究に興味を持ち、遺伝研について調べたのがきっかけです。農学部の学部生だった私は、イネを用いて卒業研究を行なっていました。イネの発生を観察するうちに、植物の胚発生に興味を持ちました。そこで、イネの胚発生を研究している研究室を探したところ、遺伝研の佐藤研にたどりつきました。その時に、遺伝研が総研大の一部として大学院生教育を行なっていることを知り、進学先として考えはじめました。
どうして遺伝研を選んだのですか?
遺伝研の研究環境に魅力を感じたからです。遺伝研を知った当初は、総研大についてほとんど聞いたことがなかったので、総研大生がどのように研究をしているのか想像できませんでした。そこで、学部3年生の時に体験入学の制度を利用し、遺伝研に5日間滞在しました。体験入学では、実際に佐藤研で簡単な実験を行い、その他の研究室の研究紹介を聞き、研究室を訪問しました。そこで、遺伝研で行われている最先端の研究や、研究機器に触れられたことで、遺伝研に進学したいと思うようになりました。
佐藤研ではどのような研究をしていますか?
私は単子葉植物のイネをモデルに植物の胚発生の過程で、胚の非対称性がどのように形成されるのかを理解することを目指しています。植物に限らず多細胞生物では、非対称性の形成が重要な発生のステップです。例えば、受精後の胚発生において生じた胚の頂部と基部の非対称性はそのまま植物の地上部と地下部の成長方向に対応します。このような非対称性がどのように生じるのかを解明します。
なぜその研究をやろうと思ったのですか?
イネにおいて単子葉植物の胚特有の非対称性に着目することで、双子葉植物との発生メカニズムの違いを解明したいと思ったからです。被子植物では双子葉植物のシロイヌナズナをモデルに研究が進められました。多くの研究者はシロイヌナズナで解明されたメカニズムは単子葉植物にも当てはまると考えています。しかし、単子葉植物と双子葉植物には違いも見られます。例えば、その名が示すように、子葉の枚数が違います。双子葉植物では2枚の子葉が相向き合って対称的に配置しますが、単子葉植物では子葉は1枚しかないため非対称性として定義することができます。このような単子葉植物特有の非対称性がどのように形成されるのかを解明し、双子葉植物の発生メカニズムと比較することで、単子葉植物と双子葉植物の違いをもたらすメカニズムや単子葉植物が双子葉植物からどのように進化したかがわかるかもしれません。植物の基礎研究の分野ではイネをモデルにした研究はマイノリティーだと思いますが、独自性を生かした研究が展開できればいいと思います。
大学の研究室と比べて違いはありますか?/どんなところが違いますか?
一般的な大学では学生の割合が高いですが、遺伝研は研究所なので、ポスドクなどの研究者の割合が高い点が違うと思います。ポスドクは学生の自分たちよりも経験や実力が上で、最も精力的に研究を行なっている方々と言えると思います。そのような方々からアドバイスや刺激を受けることができます。
さらに、遺伝研には多様な分野の教員が所属しており、指導教員とは別の教員がプログレス委員として指導に参加することも独特な点です。プログレス委員の先生方とは所内のポスター発表会や面接などで議論する機会があります。プログレス委員は学生が自由に選ぶことができ、私も植物分野以外の先生にもプログレス委員をお願いしています。そのため、所内で発表する際には多くの分野の人が理解できるように気をつけています。議論を通じてプログレス委員の先生方からは客観的なアドバイスを受けることができます。
- 他にも特徴があり研究所のHPで詳しく解説されています。
学生生活はどうですか?
一般的に大学院生の生活は不安定だと言われていますが、遺伝研では様々な学生支援制度が充実しています。大学院生はリサーチ・アシスタントとして雇用され、給料が支給されます。さらに、格安の家賃で遺伝研内の宿舎に居住することができます。
遺伝研の総研大生は留学生の割合が高く、日常的に留学生と触れ合う機会が多いことも学生生活の特徴的な点です。コロナの流行前までは、留学生と伊豆半島を旅行したり、新入生歓迎会などで話したりする機会がありました。現在でも、感染症に気をつけながらスポーツなどのクラブ活動を行っています。そのような活動で、コミュニケーション力や英語力が鍛えられたと思います。
遺伝研の英語教育で役立ったことはなんですか?
遺伝研では「遺伝研メソッド」と呼ばれる独自の教育プログラムがあり、研究者として必要とされる英語力を養う上で役に立ちます。この授業のユニークな点は、遺伝研の研究者が授業の設計に関与し、研究の現場で必要とされている英語力を養うという視点に立って構成されていることです。この授業では、実際に自分の研究を英語でプレゼンテーションし、議論します。授業では、ただ英語でプレゼンテーションをすればいいのではなく、論理的な構成を学習します。さらに、発表の質疑応答では、質問者の意図を的確に読み取るためにどのようなことに心がければいいのかを学習しました。
三島の暮らしはいかがですか?/三島のおすすめスポットはありますか?
三島は都会に比べると田舎なので不便なところもありますが、豊かな自然を満喫することができます。実は私は静岡県の出身なので、三島の暮らしに不便を感じたことはないのですが、都会出身の学生からすると多少不便を感じるようです。しかし、三島にはそれを補って余りあるほどの豊かな自然があります。特に日帰りで富士登山ができることが三島の立地の素晴らしいところだと思います。富士山では標高によって生息する植物種が異なる「垂直分布」を観察することができます。遺伝研も珍しいサクラの品種をコレクションしていて、遺伝研一般公開の時には三島の観光スポットになっています。春に所内を散策するだけでも様々なサクラを楽しむことができます。
- 2022年8月時点