河内 舟月

平田研究室・脳機能研究室

河内 舟月(かわち しゅうげつ)

総合研究大学院大学・遺伝学専攻5年一貫制博士課程2年次(D2)

平田研究室 脳機能研究室

どうして遺伝研を選んだのですか?

平田研究室で行われてきた独創的な研究に魅力を感じたからです。またイベントや遺伝研出身者から感じた開明的な雰囲気や、充実した研究環境にもあこがれがありました。こうした期待はおおむね裏切られなかったと思います。

入試の思い出は?

入試を受けたのは2018年です。1日目が筆記試験で2日目が面接試験(口頭試問)という形式でした。2日目の面接試験では先生方からの指摘によってはじめて筆記のミスに気がついたり、あわてて補足した説明が最後まで納得していただけなかったように感じたりと、「これではだめかもしれないな」と不安を覚える場面がいくつもありました。とても蒸し暑い夏の日で、もやもやした気持ちを抱えたまま帰りの深夜バスを待ったことを覚えています。一方で筆記試験が終わった1日目の夜に、はじめて出会った受験者たちと筆記試験の検討会を行ったのはいい思い出です。彼ら受験者たちは学部での専攻や問題意識がわたしと異なっていましたので、ひととおりではない仮説を求める設問について、新鮮な意見をたくさん聞くことができました。

平田研ではどのような研究をしていますか?

マウスの匂い受容をささえる脳の回路について、その構造とふるまいを探っています。いまだ体系的な解析が進んでいない嗅球から嗅皮質に至る神経回路をつついて、構造とふるまいを明らかにしようという研究です。手法としては、平田研究室で開発された手の込んだマウス遺伝学のツールを下敷きとして、DREADDと呼ばれる人工受容体を特定の神経細胞集団に発現させます。この人工受容体の、デザイナー・リガンド投与によって神経活動をON / OFFできる性質を利用して、行動変容の観察と神経活動トレースを行っています。

なぜその研究をやろうと思ったのですか?

遺伝学を使って、神経回路の配線に隠された合理性に迫りたいと考えたからです。脳の入り組んだ神経回路を調べるために遺伝学的なツールは重要です。遺伝学的なツールは、脳が脳自身を組み立てていく仕組み、つまり神経発生のメカニズムを利用した道具ですから、脳の機能単位を細かくつつくにあたって大変有効なアプローチのひとつだと思っています。

平田先生はどんな先生ですか?

おおらかで、非常にバイタリティのある先生だと思います。基本的には個人主義、放任主義の色が濃い研究室なのですが、平田先生に尋ねればいつでもアドバイスがいただけるので、頻繁に研究内容について相談させていただいています。

大学の研究室と比べて違いはありますか?/どんなところが違いますか?

職業研究者およびテクニシャンに対する学生の比率が低いということは言えると思います。例えば、平田研究室には教員が3人(教授1人、助教2人)、テクニシャンの方が5人いらっしゃいます。一方で学生はわたし1人です。サポートしていただく立場からすると、けっこう「ぜいたくな身分」と言えそうです。ただこの比率は研究室ごとに相当違いますね、例えばお隣のフロアにある井ノ上先生の研究室は、たいへん多くの学生で賑わっているようです。

遺伝研のオススメってどんなことですか?

一点目としては、生活面での学生支援制度がきちんと整備されていることです。生命科学系の大学院を見渡せば、学生への金銭的支援の点で、遺伝学専攻よりいい条件を提示しているところはいくつかあります。それでも、遺伝研は格安の宿舎を提供していますし、RA (Research Assistant) 費として支給される月給の増額も行われました。留学生チューターや大学院紹介を行えば一定の時給が支払われ、学会参加の際の交通費や宿泊費も機関が負担します。アカデミックハラスメントを防ぐ仕組みやカウンセリングも含めて、在学生の生活サポートについて、隅々まできちんと目を向けている機関だと感じます。二点目は、学生をひとりの研究者として扱い、育てる仕組みが充実していることです。英語での科学コミュニケーションを学ぶコースワークが選べたり、URAによる学振申請書作成の支援があったりと、研究室の枠を越えての教育がなされています。またセミナーやジャーナルクラブ、プログレスレポートなどの集まりでは、学生・ポスドク・教員の区別なく、皆が熱心に英語で議論します。最後に三点目として、研究機関としての遺伝研に独特の魅力があることです。戦後間もない頃に立ち上がった遺伝研は、歴史的な厚みを持った研究所です。図書室の書庫や遺伝学博物館を訪れれば、その伝統の一端に触れることができると思います。いま現在でも「遺伝学」というキーワードを旗印として、多様で特色あるラボがひしめき合っています。特定の分野に飽き足らず、多角的な視点を取り入れたい方には、刺激的な環境なのではないでしょうか。 また、所長の強いリーダーシップのもとで、コロナ禍への対応が迅速かつ合理的に行われたことも特筆すべき点です。大都市圏のキャンパスに多くの学部を有する大学とは一味違った、小回りの良さを生かした対応が可能だったと言えます。

三島の暮らしはいかがですか?

三島は大都市近郊の出身者からは田舎に感じられる部分があるとは思います。わたし自身は読書が趣味なので、巨大書店が近場にないのには少しがっかりしました。結果的に私物の本はほとんど電子書籍か、通販で買うようになりました。食事については、一時期はほぼ毎日宿舎のIHで自炊していましたが、ここのところ平日の昼は弁当の宅配、夜は所内食堂、というパターンが増えました。外食のお店は市内中心部と国道沿いにまとまっているのですが、こうした店舗もたまに利用します。運転免許とマイカーがあれば便利な地域ではあると思いますが、どちらもまだ持っていないわたしでも、自転車一台でどうにかなっています。

三島のおすすめスポットはありますか?

特定の場所、という趣旨からは少しズレますが、三島市内には湧水や小川が多く、いろいろな場所から伊豆、箱根、富士の山々が望めます。少し足を伸ばせば沼津の海岸にもたどりつけます。市立図書館がなかなか充実していたり、市内の広小路界隈で開催されている読書会があったりと、文化の香りもある町です。

後輩へのアドバイスは?

入学を検討しはじめたら、所属を希望する研究室を直接訪問し、雰囲気や研究内容を正確に掴んでおくことをおすすめします。できるだけ納得感を高め、見通しを持った上で受験を決めたほうがよいと思います。また、こうして情報を集めていく段階では、同時並行で遺伝学専攻以外の選択肢もよく調べたほうがよいと思います。進学先探しの過程でいろいろな研究の一端に触れられますので……。入試については、筆記試験の過去の入試問題がサイトにアップされています。まずは時間をとって何年分か解いてみましょう。特定の知識を問う形式ではないので、教科書を丸覚えして臨む必要はないと思います(でも、網羅的に勉強しなおしておくとのちのち効いてくるかも)。学部や修士での専攻が生物学ではなかった方は、遺伝学が扱いうる基本的な生命現象について、少し背景知識を身につけておくのが無難かもしれません。面接試験は緊張する人が多いです。事前に発表練習をしておくと安心です。出願書類や筆記の答案の中で突っ込まれそうなところには、一応の答えを準備しておきましょう。

  • 2020年8月時点