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専攻長のメッセージCHAIR'S MESSAGE

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総合研究大学院大学遺伝学専攻長
花岡 文雄
(国立遺伝学研究所 所長)


遺伝研の大学院(総合研究大学院大学・生命科学研究科・遺伝学専攻)では、一人前の科学者を育てようとしています。そこで科学者になりたい、あるいは自分の職業として科学者という道を選択肢のひとつとして考えている大学生や高校生の皆さんに、科学者になるということはどういうことか、基礎研究とはどういうものか、そして科学者を養成する大学院とはどのようなところかについて説明しましょう。

まず英語の”science”(科学)はラテン語の”scientia”(分かる)に由来しています。科学者とは、人類の知識を増やす人のことです。その作業を「基礎研究」といいます。基礎研究によって得られた知識を正しく使って人類に役立てるのが「応用研究」です。すなわち応用というものは、常に基礎の上に築かれます。したがって基礎研究には絶対的な価値があります。

基礎にしろ応用にしろ、科学者というものは元来、理屈よりも純粋に研究が好きな人種です。ちょうど野原でフリスビーを夢中になって追いかける犬のようなものです。何か知りたいことがあって、あるいは基礎的な知識を何かに応用したいと思って、日夜、そのことに没頭し追い求めるという熱意のある人が科学者に向いています。

あるいは特にどのような職業に就きたいかがよく分からない人は、取りあえず大学院に進んで勉強を続けるという場合もあると思います。研究はうまく行くとは限らない、否、うまく行かないことのほうが多いのですが、試行錯誤する中で、努力していればきっといつかは成功するものです。その成功体験が科学者への道を拓きます。女子学生の皆さんも科学者という道を考えてみてはいかがでしょうか。キュリー夫人を持ち出すまでもなく、科学者としての能力に男女差はないと思います。

科学者の主な就職先は、大学や研究所、企業の研究部門ですが、様々な分野で科学者が必要とされています。例を挙げれば、警察関係で、犯罪の捜査にDNA鑑定は欠かせません。また銀行、保険、特許などに関連した職業で、生命科学の素養を持つ人材も必要です。現在、我々は不確実で想定外のことが多発する困難な時代に生きています。こうしたときにこそ、科学者が社会の色々な分野に進出して、他の人々と協力して様々な難問に立ち向かうことが大切なのです。

最後に大学院での教育について述べます。大学の学部での教育では既存の知識や理論を学びます。一方、大学院では自分の研究テーマを持って、実際に研究を行います。そこで大きくても小さくても何らかの発見や発明をして、論文を書くことによって世の人々に公表します。そうして一人前の科学者としての能力を身に付けることになります。その際、教員や先輩からの技術的な、あるいは思考上の指導がとても重要です。そうした中で、大学院生が自ら手法を編み出したり、改良したり、あるいは新たな理論を導き出すといった成長が生まれてきます。

遺伝学専攻の具体的なテーマ等については、ホームページを参照してください。意欲のある皆さんの参加をお待ちしています。