C-mannosyltransferase Dpy19l1l regulates body axis formation via secretion of SCO-spondin in zebrafish
Tomoko Usami, Takehiro Suzuki, Sayaka Okubo, Hiroki Kamo, Hajime Fukui, Naoshi Dohmae, Kazuhide Asakawa, Siro Simizu
Biochemical and Biophysical Research Communications (2026) DOI:10.1016/j.bbrc.2026.153510
私たちの体は、発生の過程で正確に「まっすぐ」な体軸を作り上げます。今回我々は、体の軸をまっすぐに保つために不可欠な分子メカニズムを明らかにしました。
本研究では、C-マンノシル化と呼ばれる特殊な糖鎖修飾に注目しました。これは、タンパク質の特定のアミノ酸(トリプトファン)に糖(マンノース)を直接結合させる修飾で、進化的に保存されていますが、その生体内での役割はほとんど分かっていませんでした。
我々は、ゲノム編集法を用いてC-マンノシル化酵素のひとつであるDpy19l1l を欠損させたゼブラフィッシュを作製しました。その結果、胚の段階から体軸が下向きに強く曲がる「curly tail down」表現型が高頻度で出現しました。また、初期胚期に体軸の目立った異常を示さなかった変異体は、成長後にヒトの脊椎側弯症(せきついそくわんしょう)を思わせる体軸が湾曲する形態異常を示しました(図)。
では、なぜこの酵素が欠損すると体が曲がるのでしょうか?
鍵となったのは、SCO-spondinという巨大な分泌タンパク質です。SCO-spondinは脳脊髄液中でライスナー線維(Reissner fiber)という細い繊維構造を形成し、体軸の直線性の維持に重要な役割を果たしています。私たちは質量分析を用いて、SCO-spondinが実際にC-マンノシル化を受けることを証明しました。さらに、蛍光タンパク質で標識したSCO-spondinをライブイメージングで観察したところ、Dpy19l1l欠損胚ではSCO-spondinが正常に分泌されず、細胞内に蓄積してしまうことが分かりました。その結果、ライスナー線維が形成されず、体軸の湾曲が生じることが明らかになりました。
本研究の意義
本研究は、C-マンノシル化の生体内機能を明確に示しました。ヒトにおけるDpy19l1の機能や、Reissner fiberの役割はまだ不明ですが、脳脊髄液や分泌タンパク質の異常が体軸の異常に関与する可能性が示唆されます。今後は、脊椎側弯症の分子メカニズムの解明や、C-マンノシル化を標的とした創薬へと発展することが期待されます。本研究は、慶應義塾大学理工学部生物化学研究室(清水史郎教授)、国立遺伝学研究所神経システム病態研究室らの共同研究として、科研費、NIG-JOINT (12A2023、2A2024、 1B2025)の支援を受けて行われました。筆頭著者の宇佐美朋子さん(慶應義塾大学)は、特別共同利用研究員として国立遺伝学研究所に在籍し、ゼブラフィッシュを用いた実験を行いました。

dpy19l1ノックアウト変異体(右)は体軸が湾曲する。