色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション
 
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第2回 色覚が変化すると、どのように色が見えるのか?
著者:岡部正隆 Masataka Okabe / 伊藤啓 Kei Ito / ■著者プロフィール

はじめに

カラー印刷技術の発達やパソコンやインターネットの普及によって、近年我々の身近なところで、色の違いによって重要な情報を判断しなければならない機会が急激に増えてきている。学術雑誌ではカラー図版が増加し、学会においてもカラー印刷したポスターや、カラースライドや液晶プロジェクターを用いたカラフルなプレゼンテーションが一般化しており、発表者が色の違いで重要な情報を伝えようとするケースが多くなった。

色は、我々の眼が受容した光の波長別強度情報に基づいて脳で合成される感覚であり、その感覚は遺伝的背景に依存して大きな個人差がある。遺伝的背景以外にも、白内障のように水晶体が着色したり、緑内障や糖尿病性網膜症など網膜の神経細胞に障害を与える疾患においても、色覚は大きく変化することが知られている。文字や記号のような形態に基づいた情報伝達と異なり、色による情報伝達は色覚の個人差によって、相手に正確に伝わらない可能性があることに注意しなければならない。そこで本連載では、ヒトの色覚の多様性について概説し、多様な色覚に対応した「色覚バリアフリープレゼンテーション」の方法を紹介する。

第1回では「色覚の原理と色盲のメカニズム」と題して、基本的な色覚の原理、視物質遺伝子の多様性、色盲*1 が生じるメカニズム、色盲の分子遺伝学、色覚検査などについて紹介した。第2回では、赤緑色盲や全色盲といった先天性の色覚特性、加齢や眼科疾患に伴う色覚変化(後天色盲)での色の感じ方、色の定量的な表現法、色覚のシミュレーションなどを紹介する。

  1. ヒトの色覚と先天色盲について
  2. 赤緑色盲の人にはどのように色が見えるのか
  3. 青黄色盲の人にはどのように色が見えるのか
  4. 全色盲の人にはどのように色が見えるのか
  5. 後天色盲
  6. 色の定量的表現法と色盲での色の見え方
  7. 色覚シミュレーションの原理とソフトの紹介
*1 「色盲」については差別的表現を避ける意図から「色覚異常」「色覚障害」「色弱」などと言い換えられることも多いが、本稿では、「異常」などの無用な価値判断を含まず、バリアフリーにおいて最も配慮が必要な重い症状までも包含している「色盲」という用語に統一する。言葉の抱える問題に関しては、本連載第1回の註*1 やホームページ http://www.nig.ac.jp/labs/DevGen/mou.html を参照されたい。

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細胞工学Vol.21 No.8 2002年8月号[色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション]
・文章に関しては、秀潤社と著者に著作権がございます。


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