概要

新分野創造センター(Center for Frontier Research)は、「あたらしい人材」と「あたらしい分野」を同時に育成するためのインキュベーションセンターです。 若手の優れた研究者が研究室主催者(テニュアトラック准教授)として研究室を運営し、遺伝研の卓越した研究環境や様々なサポートを活用して遺伝学とその周辺領域に新しい分野を開拓する研究を行っています。
テニュアを獲得した教員は遺伝研に新しい研究部門を創り、自ら創成に関わった新分野を牽引していきます。

これまでに実施した選考方法

当センターの独立准教授には、PI(研究室主催者)として独創的な研究プログラムを展開していくことを期待しています。そのために、開拓意欲をもち、創造性豊かなアプローチで挑戦的な研究を遂行できる人材を求めています。
これまでの選考は二段階でおこなっています。一次選考では論文数や研究費獲得額などの数値にはこだわらず、研究提案の方向性・意義や独創的アプローチの実行可能性を重視しました。二次選考では5-10名のショートリストに絞りこまれた候補者を遺伝研に2日間招待しました。 1日目は候補者全員が英語で発表する公開シンポジウムで、活発な質疑応答を行い、2日目には所内の研究室や研究施設を訪問し、人事委員以外の教員とも議論しました。 所外委員を含む人事委員会による個別面接では、チョークトーク(非公式ディスカッション)で公開シンポジウムでは説明しきれない将来計画や今後切り開こうとする分野についても紹介し、議論しました。 このような候補者とのコミュニケーションの豊富な機会が、開拓者精神をもって挑戦的な課題に取り組んでいる人たちの選抜に役立っています。

これまでの研究環境の例

新分野創造センターには、テニュアトラック(TT)期間に独自の研究に打ち込める環境が整っています。 5年間のTT期間中、自らの研究室を運営するための研究費(スタートアップ経費を含み計3,300万円 [2014年の採用者の実績])と人件費(ポスドク・研究補助員各1名分)が支給されます。 メンタ―役の2名の所内教授は、研究そのものや研究室の運営等について、「指導者」ではなく「相談相手」としてテニュアトラック教員をサポートしています。 年度評価や中間評価も「評価ではなく助言のためのシステム」と位置づけられており、所外委員3名を含む新分野創造センター運営委員会から研究室運営やテニュア獲得の助言が得られます。 さらに、所内の合同ジャーナルクラブや合同ラボミーティングを活用して研究交流を広げることができます。

テニュア審査

遺伝研のテニュアトラック制度は「遺伝学の分野の拡充」と「生命科学のフロンティアを開拓する人材の養成」という遺伝研の2つのミッションと密接につながっています。
テニュア評価においては、自らが開拓した新しい分野を率いて発展させる能力の審査を行うために、以下のような審査基準を設けています。

  1. 分野の創成につながる優れた成果を上げていること
  2. 中核として分野を牽引する高い能力を持つこと

このような科学的創造性を重視する基準を採用することにより、新しい方向性への視点をもち挑戦的なプロジェクトに取り組んでいる人材を登用しています。
この基準を満たす成果としては、「これは新しい分野を生みそうだ!」と予感させるような新しい現象、概念、技術や分子の発見とそれを独自の研究へ展開することがあげられます。
既存の分野の新展開のなかでも、分野の跳躍的発展を引き起こすようなブレイクスルーであるなら、「新分野創造につながる」と考えられます。

テニュア審査は絶対評価です。テニュアトラック教員公募は採用予定人数分のテニュアポジションを準備して行なわれています。
2009年のテニュアトラック制度創設以来、7名の教員がテニュア審査を申請し、全員がテニュアを獲得しています(2020年3月現在)。