専攻長からのメッセージ

総合研究大学院大学遺伝学専攻長 桂 勲

青春の貴重な時間を大学院での研鑽に使い博士号を取得したいと考えている人に出会うと、その熱い思いに心を動かされます。 このような人たちの気持をしっかりと受け止めて、大学院生活に関する説明と助言のメッセージを送りたいと思います。

 

大学院では、専門の知識・技術だけでなく、論文を批判的に読む力、研究を計画し実行する力、論文や口頭での発表を行う力などを習得します。 それだけでなく、みずから進んで、研究活動の中で人間関係を作り、視野を広げ、コミュニケーション力・自己評価力・応用力を身につけることも、特に将来のために大切です。 博士論文の研究を完成することは、全く新しい経験になるでしょう。 孤独感と不安の中で研究を行い、失敗と成功を体験して目標を達成することにより、真の自信が得られ、自立した研究者になれるのです。

 

また、ぜひ研究者の喜びを味わって欲しいと思います。成果が新聞に載ることや賞をもらうことなどは付随的なことで、研究者の喜びは何よりも研究自体の中にあります。 意識を集中して考えたり、実験をしたり、論文を書いたりするときに感じる喜びこそが研究者の喜びです。 自然界の謎を解く研究という行為が人間にとってどんな意味があるのかを、深く感じ考えて下さい。

 

遺伝研には、大学院生にとって魅力的なものがたくさんあります。 最先端の設備、個性豊かな第一線の研究者、複数指導教員による教育、研究室間の垣根の低さ、豊富な来客のセミナー、独自に開発した科学英語教育などです。 これらは大学院生にとって手段なので、上手に使って下さい。一方、目的、すなわち遺伝研でどのように自分を磨き、卒業後にどのように社会に貢献するかは、大学院生が自分で計画し決めることです。

 

「生命とは何か」という問題に答えることは人類最大の知的挑戦の1つです。博士号を取得した後はアカデミックの世界に残り、今の研究者を追い抜いて新しい学問を作ることを、我々は強く期待しています。 しかし、それだけでなく、これからの世界では、社会との接点もますます重要になります。 生命科学の広い知識と深い研究経験を生かして、人類の福祉のために応用・開発研究に献身する仕事や、科学コミュニケーション・科学政策など科学と社会の間をつなげる仕事なども、同様にやりがいがあると考えています。

総合研究大学院大学遺伝学専攻長
桂  勲

大学院説明会2016 チラシ