資料提供者 ?森脇 五郎(国立遺伝学研究所名誉所員)からの御寄稿?

国立遺伝学研究所の設置とあゆみ

(89')国立遺伝学研究所 公衆衛生 36巻(12号)(1972年12月)医学書院発行

本研究所は1949年(昭和24年)5月31日に文部省設置法が公布され、6月1日を以て誕生した。遺伝に関する学理の総合研究及びその応用の基礎的研究をつかさどり、あわせて遺伝学研究の指導連絡及び促進をはかることを目的とし、研究センターとしての使命を帯びて設立された。
設立への公的な第一歩は1939年(昭和14年)10月、第12回日本遺伝学会の役員会において、当時北大教授であった小熊桿博士が国立遺伝学研究所設立の緊要なことを説かれたことが、設立への公的な第一歩といえる。これから実現までは戦争をはさんでではあるが10年を経過している。土地の選定に際して生じた農地問題、占領下のGHQとの交渉難航など、幾多の困難、曲折を経て遂に開設にたどりついた。
研究所創設に際して、小熊捍初代所長自ら細胞遺伝部長を兼ね、田中義磨九大名誉教授が形質遺伝部長に、駒井卓京大名誉教授が生理遺伝部長に就任され、3研究部で出発した。このように遺伝学界の3長老が研究所の使令達成のために新たな情熱を燃やされたことが、当研究所の基礎固めと発展にどれほど大きな力となったかは測り知れぬものがある。研究所が創設以来とりつづけて来た重要な方針の一つは国際的レベルにおいて高めるということであった。特にその具現に、木原均第2代所長の御努力は顕著なものがあった。
1956年に国際シンポジウムをわが国の開催とされたのも先生である。これを期に研究所からの海外留学者は、創立20年余りにして160名に達し、これに対して外国人遺伝学者の来訪も700名近い。研究部門も3部門に加えて、生化学・応用・変異・人類・微生物・集団および分子の7部門、合計10研究部となっている。

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