遺伝学の歴史

メンデルの法則 〜 独立の法則

  上に述べた二つの法則は、優性と劣性との1対の形質(これを対立形質という)についての法則であるが、2対以上の異なった形質の遺伝様式に関する法則が独立の法則(law of independence)である。 

  たとえば、エンドウの種子の形と子葉の色という二つの形質について、種子の形が滑らかで丸く (AA)、子葉が黄色のもの (BB) と、種子の形がシワが寄って角ばり(aa)子葉が緑色のもの(bb)とを交配する(図1・4)。

  両親の遺伝子型はそれぞれAABBaabbで表される。生殖細胞は、それぞれABabとになり、これらの受精によって生ずるF1個体はAaBbとなりAaに対して優性、Bbに対して優性なので、F1個体はすべて種子が滑らかで丸く、子葉は黄色になる。

  このF1の生殖細胞は、花粉も胚珠もともにABAbaBab、という4種の生殖細胞になるので、これらの受精によって生じるF2個体は、種子が滑らかで丸く、子葉の黄色のもの(遺伝子型はAABBAaBBAABbAaBb)、種子が滑らかで丸く、子葉が緑色のもの(AAbbAabb)、種子がシワが寄って角ばり、子葉が黄色のもの(aaBBaaBb)、および種子がシワで角張り、子葉が緑色のもの (aabb) が9:3:3:1の比に生じる。

  このことは種子の形を支配する遺伝子Aまたはaと、子葉の色を支配する遺伝子Bまたはbとは、それぞれ他の遺伝子の影響を受けることなく、独立して生殖細胞に分配されることを示している。後で述べるように2対の対立形質を支配する2対の遺伝子が連携して (連鎖という)、一緒に行動をともにする現象が見つかり、Mendelが遺伝の法則で取り上げた七つの対立形質は、いずれもそれぞれ別々の染色体上に座上していたために、この独立の法則の発見につながったのである。同じ染色体に2対の対立形質を支配する遺伝子が存在する場合は、この二つの遺伝子は染色体と行動をともにし、一緒になって子孫に伝わることになる。このメンデルの法則については3章でさらに詳細に述べられる。

メンデルの独立の法則

「基礎遺伝学」(黒田行昭著;近代遺伝学の流れ)裳華房(1995)より転載