文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」 シリア・中心体系による生体情報フローの制御

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研究概要

生体の様々な営みは細胞内外の情報伝達の上に成り立っているが、細胞内外で発生したシグナルが受容・解釈されるまでの間、等方的に伝わる訳ではなく、局在化、ベクトル化(方向付け)されることにより、効率的な情報伝達を達成している。しかしながら、細胞内・細胞外空間を通して、情報の流れがどのように整流され、方向付けられるのかを包括的に展望する視点はこれまで未成熟であった。本研究領域では、細胞の内外を貫くシリア(繊毛)〜中心体系という密接に関連した構造を、生体情報の流れを制御するダイナミックな細胞内小器官として捉え、その構造と動態に立脚した新たな視点から、細胞内外の情報フローの制御を体系的に理解することをめざす。この新しい概念を基軸に以下の3つの目標を設定する。これらの研究を推進することによって、細胞構築に立脚した新しい生体情報学として、シリア-中心体系の研究分野を確立する。

【研究項目A01】
シリア-中心体系の構造とダイナミックス、及びそれらの細胞表層骨格構築による制御を、分子レベルで明らかにする。
【研究項目A02】
シリア-中心体系による様々な細胞外シグナルの受容・伝達機構、及び細胞周期などの時間的制御に対するシリア-中心体系の役割を明らかにする。
【研究項目A03】
細胞分裂・細胞移動などの様々な細胞動態において、シリア-中心体系が細胞内情報を集約し、細胞の非対称化へと導くメカニズムを明らかにする。

近年、シリア-中心体系は、様々な生化学シグナルあるいは力学的シグナルの発生・伝達・整流・応答に重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。また、中心体の動態は、細胞の分化・発生にも重要な役割を果たすことが注視されている。単なる細胞のアクセサリーと認識されてきた一次シリアが、驚くほど多様な生理作用に関与し、その破綻は多彩な疾患・症状に結びつくことも、目覚ましい勢いで明らかにされつつある。シリアの基底構造と中心体は共通の分子基盤を持ち、ともに細胞骨格構造の中心として働き、生体情報の流れを集約・ベクトル化する機能を持つにも関わらず、互いの関連性や分子論的理解は断片的であり、生化学、構造生物学、発生生物学、神経科学などの様々な分野に分散しているのが現状である。本領域に集結した各分野の研究者は、これまでの知見を融合・発展させ、生体情報のフローとシリア-中心体系の動態をリンクさせる新しい学問分野を創出することを目指す。

研究図