2013/10/10

DNAを有害な放射線から守る新しい仕組み 〜放射線の影響の理解や、がん治療への応用につながる可能性

Press Release

Chromatin compaction protects genomic DNA from radiation damage

Takata, H., Hanafusa, T., Mori T., Shimura, M., Iida, Y., Ishikawa, K., Yoshikawa, K., Yoshikawa, Y., Maeshima, K.

PLOS ONE 8(10): e75622. doi:10.1371/journal.pone.0075622

プレスリリース資料

放射線は生物にとって大きな脅威。放射線にさらされると細胞内のDNAが切断され、遺伝子が正しく機能しなくなったり、がん化や細胞死が引き起こされたりするからです。しかし、自然界にはもともと自然放射線が存在しています。
 本研究では、生物が放射線からDNAを守る新たな仕組みを突き止めました。それは、DNAが密に集まる、ということでした。DNAは特殊な構造をした長い線維で、細胞の核の中に折りたたまれています。そうしたDNAが、密に集まって存在(凝縮)するか、散らばって存在するかが、放射線による損傷の程度に大きく影響していたのです。DNAの凝縮と放射線耐性の関係を、定量的に測定し、さらにコンピュータシミュレーションを行うことで、放射線がDNAを切断するメカニズムも詳しく明らかにすることができました。

その結果、自然界から浴びる放射線を、生物は細胞中のゲノムDNAを凝縮させることで、日々防御しようとしていることがわかりました。生物がDNAを放射線から守ろうとする新たな仕組みを明らかにした今回の研究成果は、がん治療など医療応用の面でも、重要な基礎知識を提供するものです。

生物にとって有害な放射線ですが、がん治療においては、がん細胞を死滅させるために有効に利用されています。今回の成果から、DNAの凝縮を弱める薬を使えば、放射線治療、重粒子線治療、化学療法の飛躍的な効率向上が期待できます。

DNAが凝縮していない状態のときは、DNA(赤線)は放射線によって発生するヒドロキシルラジカル(活性酸素、・OH)や抗がん剤(青丸、Pt)による損傷を受けやすいが、凝縮しているときには、DNAはこれらから保護される。


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