伝統や古いものの他にも積極的に守られているものがあります。ルールです。ルールと言えば、伝統とも関連しそうですが、こちらは新たにどんどん作り出されてしまいます。イギリスでは本当にルールが多くて、アメリカから移ってきた身にとってはかなりこたえますね。中には、冗談かと思えるようなものまであるのでなおさらです。特に、安全に関するルールは厳しいです。ラボにおいてもsafety issueという壁が立ちはだかることがあり、頭をかかえることもしばしばです。車の運転にしても、制限速度はよく守られている方だと思います。ここでは、制限速度のルールはかなり単純化されており(これは僕は気に入ってます)、市内に入ったら時速30マイルと決まっているのですが、こちらに来て早速オービスのようなものにやられてしまいました。生まれて初めてです。絶対に40マイルはでてなかったはずです。そのかわり、日本やアメリカのように時速10とか20(キロであろうがマイルであろうが)というような非現実的な数字を見ることもまずありません。ここで、そんなことをしたら、皆、本当に時速10マイルとかで走ってしまい、交通が麻痺してしまうでしょう。Safety issueのおかげで得をしたこともあります。車の走行車線が日本と同様、イギリスでは他の欧米諸国とは逆の左側であることは有名ですね。いわゆる、“left is right”というやつです。僕は、日本とアメリカの運転免許証を持っていますが、走行車線が同じということで日本の免許証は書類のみでイギリスの免許証に変更可能ですが、アメリカの免許証ではそう簡単にはいかず、厳しいレッスンと試験をパスしなければいけないようです(これに関してはアメリカに比べ日本の運転免許証を取得するのが難しいからという説もありますが)。Safety issueが言葉、文化、あるいは人種の違いといったことに優先された瞬間を見た気がしました。
このように皆が、時には融通がきかないほどしっかりとルールを守る。これくらいしないと、なかなか国家レベルでの守りの姿勢を保つことができないのかも知れません。もし、イギリス人が制限速度“時速30マイル”の標識をみて、40マイルくらいまではオーケーなどと考え始めたら、もうイギリスはイギリスでなくなってしまうかも知れません。かつては産業革命を主導したイギリスが、ローテクの国として辛抱強く質素に生きている。自分の大好きなキャラクターを守るために、国家レベルで、国民の総意としてあるときそういう選択をしたのではないでしょうか。おかげで我が家にはウォシュレットもなければ、シャワーのお湯の勢いもありません。ロンドンの地下鉄にはエアコンもありません。それでも、僕らはキャラクターたっぷりの生活をけっこう楽しんでおります。A part of the character。そう思うことが僕のストレスマネジメントです。