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| 領域代表者からのメッセージ | ||
| 領域代表 東京都臨床医学総合研究所 プロジェクトリーダー 正井久雄 | ||
| 研究者という職業は、ほぼ一年を通じて同じことをしているので、時の経つのが異様に早く感じるようになる。ついこの間新しい世紀にはいって、しばらくして、ヒトゲノム解析の完了が発表されたと思っていたらそれからもう4年も経った。今年も、ついこの間年賀状を書いたと思ったらもう2月の半ばである。 先日、ニュースレター第2号が発行されたばかりでほっとしていたら、早くも第3号の巻頭言の催促を編集者の仁木さんからいただいた。この原稿を書きかけたところでひどい風邪で体調を崩してしまい、気付いたらもう2月も終わろうとしている。仁木さん、中山さんには大変御迷惑をおかけしてしまった。 秋口から、いろいろなワークショップや、学会が目白押しである。私たちの特定領域に関連したものをあげてみても、21世紀大腸菌研究会(10月3-4日、近江八幡)、DNA複製・分配ワークショップ(10月30-11月1日、熱海)、組換え・ゲノム再編ワークショップ(11月27-20日、淡路島)、染色体ワークショップ(1月31-2月2日、唐津)などと続いた。染色体サイクル特定領域総括班は、これらのワークショップの共催として支援する機会を得た。私自身これらのワークショップすべてに参加したが、いずれのワークショップにおいても、多くの大学院生や若い研究者が大変生き生きと、レベルの高い発表をしていたのがきわめて印象的であった。このような研究会は、持ち回りで行い、オーガナイザーはまさに手作りでいろんな工夫をして参加者が楽しめるようにアレンジしてくれる。普通の学会と違い、時には温泉を楽しみながら、いつもはじっくりと話ができない人と話ができるという特典がある。発表の機会を得た大学院生や若い研究者にとっては、またとないアピールの機会でもある。特定領域という研究スタイルは、個人研究とは異なり、グループとして特定の研究分野の格段の発展をはかるものである。したがって、研究者間の交流、協力がきわめて重要になる。そのためには、このようなワークショップでdataを交換しながらじっくりと討論できる機会というのは大変貴重である。最近の学会は、巨大化し、特に分子生物学会などは、あまりにポスターや講演の数が多く、また人も多く、会いたい人に会うことさえ困難な状況で、じっくりとした討論などを行うのはきわめてむつかしくなっている。そのような中、テーマをしぼったワークショップは、研究者の情報交換のためにとても重要な役割をはたす。また、口演の機会が与えられた大学院生にとっては貴重な体験であり、大きな成長のきっかけにもなる。このようなワークショップを支援することこそ、特定領域研究の目的を達成するための重要な方策のひとつであり、今後もこの特定領域が継続される限り支援を続けてゆきたいと考えている。 本特定研究に話をもどせば、来年度ははや3年目になる。5月には、升方さんらのご尽力で、第3回の領域会議が開催される予定である。中間ヒアリングも控えており、皆様と力を合わせてなんとか乗り切っていきたいと考えている。 次に、昨今話題になっている捏造の問題に関連して一言触れておきたい。我々の研究をとりまく環境は益々competitiveになり、一日も早くdataをだし,他の研究者より早くよりprestigiousな雑誌に報告することが研究の目標のようにもなっている。しかし、その中で研究者の本務を見失ってしまっては、研究者としての存在価値を自分で否定することに他ならない。研究者の本務は「真実を発見すること」であることは言うまでもない。 私たちは、ともすれば、自分の予想したような結論を支持するdataがでると、それを否定するようなdataがなければよいと思うものである。しかし、自然の中に真実は一つしかない。実は否定しているdataがもっと重要な結論を示唆しているのかもしれない。また、自分のモデル、理論に強い思い込みがある時には、時として、意図せずにdataを都合のよいように解釈してしまうことがある。そんな時、他の研究者からdataの解釈について思わぬ指摘を受けてはっとすることがある。 私たちは、真理を追究する科学者として、まず自分のデータに、次に共同研究者のデータに、最後に同業者のデータに厳格であるべきである。この特定領域研究では、是非班員全員が、他の班員の研究dataについても積極的に議論し、建設的な批判もしてほしいと願っている。そのような中から、見逃していた重要な真実の発見にいたる可能性もある。偉そうなことを書いたが、上記は主に自省をもとに書いたものである。 最後に、昨年12月9日に、「川崎泰生さんを偲ぶ会」が大阪大学で開催され、雨模様のなか、学生時代、京大山岳部時代、微研・生命機能などのそれぞれの時代の知人友人300人近くの参列者があり、故人を偲んだ。このような機会を作ってくださった本会実行委員の皆様に感謝したい。参列者の言葉から、川崎さんが、生前いかに皆から敬愛され、慕われていたかが、強く伝わってきた。これから先、川崎さんがどんなに重要な発見をしたかもしれないと考えると、その喪失の大きさに茫然とする。それよりも何よりも、幸せなご家族の大事な一員が突然いなくなってしまったことの悲しみは想像に余りある。川崎さんの奥様、二人のお子様も参加してくださったが、二人の小さなお子さんが、元気よく走り回っているところを見ると、同じくらいの子供をもつ親としては大変心が傷んだ。川崎さんの御冥福を心から祈るとともに、奥様、お子さんが悲しみを乗り越えて、これから幸せな生活を送ることができることを心から祈りたい。 |
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| ©2007 染色体サイクル |