文部科学省科学研究費補助金『特定領域研究』/染色体サイクルの制御ネットワ−ク
染色体サイクル
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染サイカルチャースクール
潤ちゃんのお絵描き塾
研究者のためのイラストレーター講座 その2
中山 潤一
理化学研究所・発生再生科学総合研究センター・チームリーダー
敷居の高いソフトの一つとして、Adobeのイラストレーターがある。
まずは、最初の一歩を踏み出すこと。その作風?で定評のある潤ちゃんこと中山潤一に初歩から奥義まで教えていただく。
はじめに
 皆さんお元気ですか?この研究領域も4月から新たに26の公募研究を加え、非常に大きな研究グループに発展してきました。このNEWS LETTERも益々充実させた情報発信媒体にできたらと考えています。ところで、私がお絵描き塾の第1回を書きあげ、このNEWS LETTERで紹介してすぐに、「実験医学」誌において良く似た連載企画が、イラストを本職とする秋月さんという方の担当で始まりました。実際に内容を見られた方はご存じかと思いますが、レイヤーの使い方からツールの説明、細かいポイントまで非常に分かりやすく書かれています。この「お絵描き塾」で取り上げて説明しようと思っていたポイントが、次々に紹介されているので、この「お絵描き塾」を連載する意義が大分薄れてしまいました。それなので今回で連載は終了…と終わらせてしまえたら簡単なのですが、仁木さんに代わり広報の担当もする事になってしまい、このNEWS LETTERをより充実させるという立場から何かは書かないといけないので、ちょっと方向転換することにしました。イラストレーターの基本的な使い方については、実験医学の連載を参考にしてもらうとして、あえて研究者のためのイラストレーター講座ということで、もう少し実践的な内容を紹介したいと思います。今回紹介する内容は、イラストレーターで論文用の図を作成し、これをどのように発表媒体に移行するか、私が普段行っている方法を紹介しようと思います。実際これらの操作は誰かに教えてもらった方法ではありませんので、もっと効率の良い方法や改善点があるかもしれません。もし御意見等ありましたらメールで連絡してもらえたら有り難いです。
第2回 Figureを作成しましょう
 今回は基本に立ち返って、ケミルミネッセンスで得たウェスタンブロットの結果を、論文用のFigureにし、これを学会発表でも使うという手順を紹介します。もしケミルミネッセンスの結果を、CCDを搭載した装置で直接取り込んだ場合は、簡単にTIFF形式のファイルに変換できますので、これをPhotoshopで開けば問題ないはずです。またX線フィルムで得られた結果の場合、スキャナー等で画像として取り込まないといけません。取り込む際の注意点として解像度があります。論文にもよりますが最低解像度をグレースケールで500dpi、カラーで300dpiを指定しているものがあります。解像度を上げすぎると逆にファイルが重くなりすぎてしまいますので、論文で求められる最低解像度で画像データを取り込んでおくのが良いと思います。実際にミニゲルサイズのウェスタンの結果をグレースケール500dpiで取り込んでみました。
 ちなみに写真Aが反射原稿として取り込んだもの、写真Bが透過ユニットを使用して取り込んだ画像です。元は同じフィルムですが、背景のバックグラウンドの強さとバンドの印象が多少異なって見えます。この図はミニゲル約半分の大きさを取り込んだ画像ですが、500dpiで取り込むと、圧縮しない状態のTIFFファイルで約750KB(キロバイト)の大きさになります。バンドの部分だけ切り抜いて図にするならば、この解像度で問題ないと思いますが、もしゲル全体をFigureにする場合は、画像の解像度を低くするなどして、最終的なファイルのサイズを調整した方が良いと思います。
 次にこの図(写真A:反射で取り込んだ方)をFigure用に調整します。Photoshopは画像処理のアプリケーションですから、当然作為的な処理をしようと思えば何でも出来るでしょう。しかし昨今問題になっている「捏造」にもつながりうる問題ですから、Photoshopでの画像処理は個人の倫理的な判断に基づいて注意して行う必要があると思っています。私は、自分でX線フィルムを現像して、それを印画紙の写真として論文投稿していた約10年前に、現像の加減で調節できたこと、という基準を設けて調節するように心掛けています。例えば背景を薄く見せバンドを強調させるような調節は、現像の焼き加減で調節可能な操作ですから、Photoshop上でも「レベル補正」という項目で行うようにしています。ただ、Photoshop上で行う実際の操作は、この「レベル補正」と「切り抜き」のみで、その他の操作はまず行っていません。ですから今回は「レベル補正」についてのみ簡単に説明します。
 上の画像でプルタブから「イメージ」→「色調補正」→「レベル補正」を選ぶと図Aのような画面が出てきます。このヒストグラムでは1がウェスタンのバンドに相当するピクセルの256階調での分布、2が背景に相当するピクセル分布を表しています。3、4の三角形をそれぞれの山の裾野に近い部分まで移動して出力レベルを変化させると、バンドの一番濃い部分を最も黒に近く、また背景を白に近づけ、全体のコントラストを変化させることが出来ます。
 しかし、3をさらに右に移動すると、バンド中の濃淡が失われ、ノッペリとした黒いバンドになります。また4をさらに左に移動すると、背景が白く飛んでしまい、意図的に不都合なシグナルを消したと思われても仕方ない図になってしまいます。ですから背景を薄くしたとしても、完全な白にしない方が良いと思います。この「レベル補正」を行い「切り抜き」によって得られた画像は写真Cのようになります。
 右の黒いマジックの印はpre-stainedマーカーの位置を示しています。場合にも依りますが、正確な移動度をFigureに反映させたいときは、これらの印を残したままにしています。この画像をTIFFファイルで保存したら、Photoshopでの操作は終了です。この他にもコントラストを調節する方法はありますが、上記の操作以外、特に画像に手を加えることはあえてしないようにしています。
 次にこのPhotoshopの画像をIllustratorに読み込みます。Illustratorの新規ファイルを開いたら、プルタブから「ファイル」→「配置」によって先程保存したTIFFファイルを選択すると、画像ファイルが配置されます。ファイルを選択する際に「リンク」というオプションを付けることができます。このリンクとは、Illustratorのファイルを開く際に、常に画像ファイルを探して配置させる操作を指示することで、Illustratorのファイル自体を非常に軽いファイルとして保存できるというメリットがあります。ただこれまでの経験では、作図のあとに画像ファイルやIllustratorのファイルを整理したりすると、元のリンクファイルを自動で探せなくなる場合があり、元通りにするのに逆に手間がかかるケースがありました。ですから特にファイルサイズを軽くする必要が無い場合は、リンクはしない方が無難でしょう。

 一つのFigureにa,b,cと幾つもの画像ファイルを並べる場合、大きさを変化させる必要があると思います。その場合はプルタブから「オブジェクト」→「変形」→「拡大・縮小…」を選択して「縦横比を固定」という項目に%の数値を入力すれば、大きさを変化させることが出来ます。また実際の画像を選択ツールで選択すると、細い青線で画像が選ばれ、白抜きの小さな四角形が上下左右対角線上に出てくると思います。この白抜きの四角形をドラッグすることで画像の大きさを変化させることが出来ます。
 実際の大きさを見ながら大きさを変化できるので、便利なのですが、注意しなくてはいけないこととして、ただドラッグするだけでは縦横比が変化してしまうと言うことです。縦横比が変化してしまってもあまり気にしないという人がいますが、実際に得られた結果という意味では、私は縦横比の変倍は避けた方が良いと思っています。この四角形を使って大きさを変化させる場合は、必ずシフトキーを押した状態でドラッグして、縦横比を維持した状態で大きさを変化させると良いと思います。
 大きさが決まったら次に分子量マーカーの位置と数値を入力します。線は直線ツール\を使って描きます。この時も先程と同様に、まっすぐな直線を引くために必ずシフトキーを押した状態で線を引きます。コピー&ペーストで同じ大きさの線を用意し、それぞれの印の位置に配置します。配置し終わったら「整列パレット」の「水平方向右に整列」で揃えます。入力した分子量の数値も整列で揃えておきます。Figureに用いるフォントは研究者によってまちまちだと思いますが、私は「Helvetica」「Regular」を通常使うようにしています。最後に位置を示す線と分子量の数値を全て選択し「オブジェクト」→「グループ」によってグループ化しておきます。
 次にマーカーの位置を決めるために残しておいた左側の余白部分を白い四角オブジェクトで隠します。この操作は、初めからこの部分を削除した同じ倍率の画像ファイルを配置すれば必要のない操作ですが、複数の画像ファイルを管理するのが面倒なので、通常この方法によって隠すようにしています。
 このあと分子量の線と数値を白い四角形より上位のオブジェクトにするため「オブジェクト」→「アレンジ」→「最前面へ」という操作をして、画像の右端に移動します。さらに画像の周囲を中抜きの黒い四角形で囲い、各レーンの上部に説明を、さらにその他の情報を記載して、Figure用の図は完成です。
 次にこの図をPowerPoint、あるいはKeynote等の発表用のアプリケーションに移す方法を紹介しておきます。通常このIllustratorの図をPowerPointで表示する場合は、Illustratorの画像をJPEGの形式に書き出して別ファイルとして保存し直しています。Illustratorのファイルは通常CYMKのカラーモードで作成していますが、JPEGに書き出す場合はRGBに切り替えています。最近のバージョンでは分かりませんが、以前のバージョンのPowerPointではCYMKの画像がきちんと読み出せないことがありました。JPEGに書き出す場合、圧縮の程度を示すオプションとして、「画質」「カラーモード」「形式」「解像度」を選択する必要があります。「画質」を「最高(低圧縮率)」、「形式」を「ベースライン(最適化)」、「解像度」を「高解像度」を選択してJPEGファイルを書き出すと、ほとんどTIFFファイルと比較して遜色ない画像になりますので、通常の学会発表なら十分きれいな画像として表示できると思います。
 先程のFigureを上記のオプションで書き出すと、約60KBのファイルになります(下左)。このサイズのファイルなら、PowerPointのスライドショウでもストレスを感じることなくスライド繰りができるはずです。ちなみに300dpiの高解像度でTIFFファイルとして書き出した図は約1MBのファイルになります(下右)。この程度の大きさのFigureであれば、ファイルの小さいJPEGの画像で、問題ない解像度が得られている事が確認できると思います。
 ファイルとして書き出した図は約1MBのファイルになります(下右)。この程度の大きさのFigureであれば、ファイルの小さいJPEGの画像で、問題ない解像度が得られている事が確認できると思います。
 Mac専用の発表ソフトであるKeynoteでは、Illustratorの画像を選択して、そのまま横に並べたKeynoteのスライド上にドラッグするだけで、非常に解像度の高いdropped Image(PDFファイル)に変換してくれるという優れた機能があります。同じような操作でPowerPointでもIllustratorの図を写すことは出来ますが、解像度など満足できるレベルの画像には変換されませんので、実用は難しいように思います。Keynoteのこの機能は確かに便利なのですが、解像度の高いPDFに変換しているためか、ファイル全体が重くなる傾向があるようです(Kewnoteは個々のファイルをフォルダーとして管理しているため、ファイルの大きさは表示されませんが、「情報を見る」というコマンドで全体の大きさを知ることが出来ます)。
 例えば先程作成したIllustratorのJPEG画像(60KB)を、Keynoteのコマンドで「挿入」→「選択」でスライド(800 x 600)に読み出すと、この1枚のスライドは128KBのファイルになります。同じ事をIllustratorのファイルから直接ドロップしてスライドへ移すと、同じファイルが1.5 MBの大きさになってしまいます。同様にして多くの画像をドロップして移行すると、全体でかなり大きなファイルになってしまいますから、一度JPEGファイルに保存してから読み出す方が、軽いファイルとして管理できるので良いのではないかと思います。
一口メモ
 論文投稿する際のFigureの扱いについてですが、最近オンラインでPDFのファイルをSubmitするように指示している雑誌が多いように思います。PDFのファイルを作成するにはAdobeのAcrobatが必要なのですが、Illustratorのファイルを「別名で保存する」というコマンドでPDFファイルを作る方法と、これとは別に「プリント」のコマンドから「PDF」を選択して、デスクトップにPDFファイルを作る2種類の方法があります。前述の方法はIllustratorの情報をそのまま保存しているのでサイズが大きくなり、例えば先程のFigureでは672KBのPDFファイルになります。一方「プリント」のコマンドで作成したPDFファイルはたった20KBにしかなりません。Submitする際の論文全体の大きさを制限されている場合、後者の方法を知っておくと便利です。
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代表者あいさつ 編集後記 ©2007  染色体サイクル