マウス行動遺伝学のホームページ(国立遺伝学研究所)

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マウス開発研究室(小出研究室small logo

「マウス行動遺伝学」
21世紀の遺伝学では個人差、いわゆる個性を生み出す機構解明が大きなテーマとなっています。人の行動においても多様な個性がみられます。新しい物好きの人、慣れ親しんだものに固執する人、運動好き、もの静かな人など私たちの周りには個性あふれる人がいます。このような行動にみられる個人差にも遺伝的要因が少なからず関わっていることが分かってきています。私たちは動物行動の個性を生み出す遺伝的機構を明らかにするために、野生由来マウス系統を主な材料として行動遺伝学の研究を進めています。


行動遺伝学の入門書『行動遺伝学入門 ー動物とヒトの”こころ”の科学ー』を裳華房より出版しましたこのたび、小出と東北大学の山元大輔先生が共同で編集した行動遺伝学の入門書を裳華房より出版しました。これまで行動遺伝学の分野を網羅する入門書がなかったのですが、多くの執筆者の方々のご協力で良い入門書を出版することができました。本書では、行動遺伝学が行われている線虫、ショウジョウバエ、社会性昆虫、ゼブラフィッシュ、イトヨ、ソングバード、マウス、イヌ、家畜動物、霊長類といった動物種やヒト双生児・ヒト疾患について、研究対象の特徴や研究の歴史を紹介しつつ、そこで現在進められている行動遺伝学研究の現状や将来への展望を紹介しています。ぜひご一読ください。

行動遺伝学の入門書『行動遺伝学入門 ー動物とヒトの”こころ”の科学ー』を裳華房より出版しました行動遺伝学入門

雄のマウスが雌に対して発する特定の超音波のパターンが雌を引き付ける効果を示すことを明らかにしましたSugimoto H., Okabe S., Kato M., Koshida N., Shiroishi T., Mogi K., Kikusui T., Koide T. A role for strain differences in waveforms of ultrasonic vocalizations during male–female interaction. PLoS ONE 6: e22093, 2011. 野生由来マウス系統雄の超音波発声パターンを解析したところ、系統間で顕著な発声パターンの違いがあることが分かりました。雌のいるケージに雄を入れた際の超音波の発声パターンと、雌が雄を嫌う行動との関連を調べたところ、ある種の発声パターンが嫌う傾向を減少させ、雌を誘引する効果を示すことが分かりました。実はこの発声パターンは韓国由来マウス系統に特徴的で、マウスでも韓流が人気のようです。

苦み物質であるsucrose octaacetate(SOA) に対する感受性に関わる遺伝子座を明らかにしましたIshii A., Koide T., Takahashi A., Shiroishi T., Hettinger T.P., Frank M.E., Savoy L.D., Formaker B.K., Yertutanol S., ALionikas A. and Blizard D.A. B6-MSM consomic mouse strains reveal multiple loci for genetic variation in sucrose octaacetate aversion. Behavior Genetics 41: 716-723, 2011 PubMed マウスの系統間でSOAに対する感受性は異なり、MSM系統はSOAの苦みを知覚するのに対し、C57BL/6系統では感受性がみられません。この苦み感受性に関する遺伝子座を調べたところ、複数の染色体が関与しており、その中でも6番染色体が最も強く関わっていることを明らかにしました。

雑誌 生命の科学「遺伝」に行動遺伝学に関する特集を出しました。小出が特集を担当しました「行動の遺伝学的基盤を解き明かす」という目標に向かって、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、ソングバード、マウス、コンパニオン動物、ヒトなどの生物種で進められてきた研究の歴史を振り返り、更に現在の研究の状況と将来への展望を、それぞれの分野でご活躍の研究者の方々に執筆して頂きました。行動遺伝学をたて糸とよこ糸を通じてよりよく理解することにつながるような特集になっています。

ホームケージの時間依存的活動性に関わる遺伝的要因をコンソミック系統を用いて解析した結果を発表しましたNishi A., Ishii A., Takahashi A., Shiroishi T., Koide T. QTL analysis of measures of mouse home-cage activity using B6/MSM consomic strains. Mammalian Genome 21: 477-485, 2010. PubMed PDF (Open access)  マウスの活動量は時間により変化し、そのパターンは系統により異なります。本研究では、MSM系統とC57BL/6系統でみられる時間依存的な活動量のパターンを、染色体置換系統であるコンソミック系統を用いてマッピングしました。

Behavior Geneticsにマウスの社会行動の系統差に関わる遺伝的解析の論文を発表しました(Open access)Takahashi, A., Tomihara, K., Shiroishi, T., Koide, T.: Genetic mapping of social interaction behavior in B6/MSM consomic mouse strains. Behavior Genetics 40: 366-376, 2010. 一般的な実験用系統であるC57BL/6Jに対し、日本産野生マウス由来系統であるMSMは高い社会行動を示します。コンソミック系統を用いたシステマティックなsocial interactionテストスクリーニングを行い、社会行動と雄間の攻撃行動に関わる複数の染色体を明らかにしました。PDF

分子生物学会で"Molecular and genetic approaches toward understanding behavior"と題するシンポジウムを開催しました。Dr. Abraham Palmerと共にオーガナイズしたものです2009年12月に横浜で行われた第32回日本分子生物学会年会においてシンポジウムを開催しました。演者としては海外からショウジョウバエを用いた行動遺伝学で著名なRalph Greenspan博士、マウスを用いた行動遺伝学的アプローチで薬物依存の遺伝基盤の解明に取り組んでいるAbraham Palmer博士、国内からは岡本仁博士、宮川剛博士、古市貞一博士、内匠透博士にご講演いただきました。シンポジウムに参加いただいたたくさんの方々、ご講演を頂いた先生方、ありがとうございました。

ホームケージ活動量のQTL・SEM解析に関する論文発表(統計数理研究所との共同研究)Open accessUmemori, J., Nishi, A., Lionikas, A., Sakaguchi, T., Kuriki, S., Blizard, D.A. and Koide, T.: QTL analyses of temporal and intensity components of home-cage activity in KJR and C57BL/6J strains. BMC Genetics 10:40, 2009. ホームケージ活動量を時間的尺度と運動強度的尺度に分解し、韓国産野生マウス由来系統のKJRとC57BL/6系統のに運動性に関わるQTL遺伝子座を同定すると同時に、その相互の関係をStructural Equation Modeling法を用いて解析しました。統計数理研究所と共同研究による成果です。

「マウス実験の基礎知識」を出版しましたマウス実験に新たに取り組む初心者の方向けに、入門書をオーム社から出版しました。動物実験倫理からマウスの取扱い方法、マウス系統の情報、更には、個体・胎仔・脳の解剖について、行動解析、遺伝学、ノックアウトマウス作製、更には、データベースの駆使の仕方などについて記載された便利な一冊です。

 

行動遺伝学研究会を開催しました第5回行動遺伝学研究会を2009年3月12日(木曜日)に遺伝研の講堂で開催しました。18名の方々によりご講演があり、また66名の参加者による熱心な議論が行われ、実り多い研究会になりました。ご参加頂いた方々に御礼申し上げます。

マウスのケージ内での様子をライブイメージで観察できます飼育ケージ内でのマウスの様子を24時間観察できるようにしました。マウスは夜行性ですので、夜間に盛んに活動し、日中はおとなしくしています。飼育室では夜の8時から朝の8時までを暗期にしています。夜間は近赤外線カメラにより暗い中でも行動が観察できるようにしました。これは、研究のために設置したカメラですが、マウスの行動に興味をもつ方々のためにライブ画像を公開します。

コンソミック系統の行動スクリーニングの論文をGenes Brain and Behaviorに発表(Open access)Takahashi, A.; Nishi, A., Ishii, A., Shiroishi, T., Koide, T.: Systematic analysis of emotionality in consomic mouse strains established from C57BL/6J and wild-derived MSM/Ms. Genes, Brain and Behavior. 7:849-858, 2008. コンソミック系統を用いて、システマティックに情動性に関わる行動表現型の解析を行い、遺伝子座のゲノムワイドな解析をした結果を、高橋阿貴さんがGenes, Brain and Behavior誌に発表しました。PDF

Mammalian Genomeに水頭症の遺伝解析の論文発表(カバーページを飾る)水頭症の発症に関わる遺伝的要因をコンソミック系統を用いて網羅的に解析した結果を高橋阿貴さんがMammalian Genome誌に発表しました。この論文では、水頭症に関わる遺伝子座をマッピングしたと同時に、水頭症を高頻度で発症する系統は、正常個体についても脳室拡大が見られることを示しました。脳切片とマウスの写真はカバーフォトにもなりました。

第7回行動神経内分泌研究会開催しました第7回行動神経内分泌研究会を2008年7月26・27日に御殿場ホテル時之栖で開催しました。約70名の参加者があり、熱心な議論が行われました。詳しくは、ウェブサイトをご覧ください。

朝日新聞「心をのぞく」シリーズにインタビューが掲載2008年4月10日(木)、朝日新聞・夕刊の中で連載されている「心をのぞく」シリーズ第4回「性格と遺伝子関係複雑」に、マウス開発研究室・小出准教授のインタビューが掲載されました。ここでは、コンソミック系統を用いた解析から、行動・性格の違いに関わる遺伝的要因が多数ありその関係も複雑であることを述べています。
詳細は、朝日新聞4月10日(木)夕刊2面掲載記事をご覧下さい。

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