E-d.応用遺伝客員研究部門
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(3)イネ生殖生長期における分裂組織アイデンティティーの転換制御:長戸康郎

イネの生殖生長期において,茎頂分裂組織は,穂軸分裂組織→枝梗分裂組織→小穂分裂組 織→花分裂組織へとそのアイデンティティーを転換する. その転換制御のメカニズムを明らかにするために,穂及び花の構造の異常を示すaberrant panicle organization 1(apo1)を同定し,解析した(原著論文8). apo1の3つのalleleを同定したが,いずれも穂及び枝 梗が短く,花では鱗被の増加,雄蕊の減少,雌蕊の増加が見られた. 野生型の穂軸分裂組織は,10本程度の1次枝梗を分化した後退化するが, apo1変異体では,数本程度の1次枝梗を分化した後小穂(花)に転換した. 即ち,apo1変異体の穂軸分裂組織は,退化するより前 に小穂分裂組織にそのアイデンティティーを転換したのである. 同様の傾向は1次枝梗分裂組織でも観察され,側生器官をほとんど分化することなく小穂(花)に転換した. 従って,apo1の花序(穂)においては,分裂組織のアイデンティティーの転換が早まっており,その野生型遺伝子は,分裂組織の早すぎる転換を抑制していると考えられる.

apo1は花においても興味深い表現型を示した. 鱗被は正常な2枚から4-6枚に増加した. 一方雄蕊は正常な6本から1-3本に減少した. 鱗被と雄蕊の数は花により変動したが,それらの合計は,野生型の8とほとんど変わらなかった. 従って,鱗被と雄蕊の領域全体の大きさは変わらないが,その中の鱗被の領域の拡大と雄蕊領域の縮小が起きていることを示している. 言い換えれば,鱗被を分化する分裂組織が長く維持され,雄蕊を分化する分裂 組織は非常に短期間で終了している. 野生型では,雄蕊分化後,分裂組織は雌蕊の心皮を1枚分化し,それ自身胚珠に転換する. しかし,apo1変異体では,複数の心皮・胚珠を側 生で分化し続け,分裂組織のdeterminacyが失われた.

このように,APO1は分裂組織のアイデンティティーの転換の時間的制御に関わる重要な遺伝子である.