E-d.応用遺伝客員研究部門
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(2)マウステトラソミー11による発生異常:高木信夫

哺乳類では,過剰な常染色体は流死産など胚発生に重大な影響を引き起こすのに対し,X染色体の増加の影響はそれ程深刻ではない. その原因は2倍体細胞では,1本を除いて全てのX染色体が不活性化されるためである. ただし,不活性化異常によりX連鎖遺伝子量が正常の2倍になった場合,著しい発生異常が起こり,妊娠の前半で致死となることが示された. 遺伝子量が倍加することによって引き起こされる著しい発生異常は,X染色体に特有なのか,常染色体にも普通に見られるのかを検討することにした. そこで,2種類のロバートソン型転座染色体Rb(10.11)8BnrとRb(11.13)6Lubをヘテロに持つマウスでは減数分裂時の染色体不分離頻度が上昇する事を利用して,11番染色体のテトラソミー(Tets 11)胚を作出し,初期胚発生における常染色体性の遺伝子量効果の影響を解析した. Tets 11胚は受精後7.5日目の時点で約5%の頻度で得られた. 発生異常は顕著で,大きさのみの比較では48時間相当の遅れが認められた. ばらつきは大きいものの,胚体部と胚体外部の区別が明瞭ではなく,原羊膜腔に死細胞が多く,中胚葉の分化が認められないなど胚発生の根幹に影響が出ていた. 2本の活性X染色体を持つ胚はTets 11胚と同等程度の異常を示す. このことは常染色体でも遺伝子量が正常レベルの2倍になれば,胚発生は著しく異常になり,X染色体が他の染色体とは特別違ってはいないことを示唆する. また,この観察は活性X染色体が常染色体2本分の活性レベルを維持している事も間接的に示している.