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遺伝子の傷を治すメカニズムの一端を解明!-損傷をチェックし、修復への足がかりとなるタンパク質のふるまい
 

私たちの細胞は、常に内外からのストレスにさらされている。太陽の紫外線や、自らの呼吸によって生じる活性酸素は、代表的なストレス源といえる。こうしたストレスは、ゲノムにDNAの欠失・挿入・置換、二重鎖の切断といったさまざまな損傷を引き起こす。損傷を抱えたまま細胞分裂を繰り返すと、細胞はがん化などの不都合な事態に見舞われる。そのようなことにならないよう、細胞には、「常にDNAの損傷をチェックし、必要に応じて直ちに修復作業に入れる状態を整える機構」が備わっている。今回、国立遺伝学研究所 系統生物研究センターの古谷寛治助教らは、分裂酵母を用いて、「損傷を検出するタンパク質から、修復タンパク質へ」と役割がバトンタッチされる詳細な分子メカニズムを解明した。この成果は、米国科学誌Molecular Cell (11月24日号) に掲載されました。

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古谷助教らは約10年にわたり、分裂酵母を用いて、チェックポイントタンパク質であるRad9の構造と機能についての解析を進めてきた。チェックポイントタンパク質とは、細胞やDNAの損傷を感知し、細胞周期を止めたうえで修復の準備を整えるタンパク質の総称で、酵母ではATR、CHK1など、約11種が知られている。
Rad9は環状のタンパク質複合体で、「DNAの2本鎖の切断」といった損傷の有無を常時チェックし、検出すると、環の中にDNAを通すようなかたちで損傷部位と結合し、細胞周期を止めたうえで修復の準備を進めることが知られていたが、具体的な制御メカニズムは謎であった。これまでに古谷助教は、「Rad9の特定の2か所で段階的なリン酸化がおき、それを目印に、下流のタンパク質が結合できるようになること」を見いだしてきた。今回は、「一連の準備が完了すると、Rad9の別の部位がさらにリン酸化されることで、DNAとの結合がはずれること」、「Rad9がDNAからはずれないと、修復が滞ってしまうこと」などを突き止めた。
上流のチェックポイントタンパク質が、これほど詳細に解析された例はない。古谷助教らによる一連の研究は、DNAの修復機構の基盤解明に大きく貢献しただけなく、がんなどの疾患の創薬研究にも応用しうる成果として評価された。


<図の説明>
分裂酵母の蛍光顕微鏡写真。組み換えタンパク質が働く様子を蛍光タンパク質により視覚化した。
正常細胞では細胞内に一点しか見えないが、 Rad9を外す事が出来なくなった細胞では組み換え修復が終わらないため複数の点が見える様になる。

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→ 掲載論文
 

雑誌名:Molecular Cell
論文名:「DDK phosphorylates checkpoint clamp component Rad9 and promotes release from damaged chromatin
(DDKキナーゼのリン酸化はRad9をDNA損傷部位から引きはがす)
著者名:Furuya, K., Miyabe, I., Tsutsui, Y., Paderi, F., Kakusho, N., Masai, H, Niki, H., and Carr, AM.
doi:10.1016/j.molcel.2010.10.026

→ 参考文献
 

Rad3-dependent phosphorylation of the checkpoint clamp regulates repair-pathway choice.
Kai M, Furuya K, Paderi F, Carr AM, Wang TS.
Nat Cell Biol. 2007 Jun;9(6):691-7.
Chk1 activation requires Rad9 S/TQ-site phosphorylation to promote association with C-terminal BRCT domains of Rad4TOPBP1.
Furuya K, Poitelea M, Guo L, Caspari T, Carr AM.
Genes Dev. 2004 May 15;18(10):1154-64.

<問い合わせ先>
国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 
原核生物遺伝 助教 古谷 寛治
連絡先 055-981-6827
ホームページ:http://www.nig.ac.jp/labs/MicroGen/
知的財産室(広報担当)
室長 鈴木 睦昭
連絡先 055-981-5873