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染色体の均等分配と進化の謎にせまる--繰り返し配列がなくてもセントロメアとして機能しうることを発見!
 

→要約
生命は、両親のゲノムがきっちり半分ずつ子へ受け継がれることで、次世代へとつながれています。また、私たちの個体も、細胞が分裂するたびにゲノムが等しく分配されることで、正常に維持されています。ゲノムは細胞分裂時にのみ「染色体」という構造をかたちづくり、染色体が倍加されたうえで、まちがいなく等しく分配されます。染色体の数は生物種によって決まっており、ヒトでは23対46本、今回対象とされたニワトリでは39対78本です。
いずれの生物種のどの染色体においても、中心付近に「セントロメア」とよばれるDNA領域があります。これまで、セントロメア付近にさまざまなタンパク質が結合し、さらに、それらのタンパク質と紡錘糸が結合することで、倍加した染色体が二つの娘細胞に等しく分配されることが知られていました。ただし、セントロメアのDNA領域には特徴的に「繰り返し配列」が非常に多くみられることから、高い精度でこの領域の塩基配列を決めるのが難しく、厳密にどの部分のDNAが重要なのかは未解明でした。
今回、深川教授らは、世界ではじめてニワトリの各染色体のセントロメア領域を厳密に解読することに成功しました。その結果、ニワトリには繰り返し配列をもたないセントロメアも存在すること、繰り返し配列の有無はセントロメアの機能に何の影響も与えないこと、セントロメア領域が特定の塩基配列によって決められているわけではないことなどを突き止めました。

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→研究の背景
細胞は増殖するために分裂を繰り返します。細胞分裂では、コピーした染色体を正確かつ安定に分配することが極めて大切です。紡錘糸と呼ばれる糸が染色体の特殊領域を捉えて染色体分配を遂行しますが、その紡錘糸が捉える染色体領域をセントロメアと呼びます。通常、セントロメアは染色体に一カ所のみ存在します。染色体上にセントロメアが二カ所存在した場合、紡錘糸がその二カ所のセントロメアに結合して染色体を引っ張るためバランスがくずれてしまい、染色体がちぎれてしまいます (図1)。 このようなことがおこると、細胞に対して悪影響が生じてしまいます。これが、ダウン症やがんなどの病気の一因であるといわれています。ところが、稀に、このような染色体分配の失敗によって、ちぎれた染色体が存在しているにもかかわらず、基本的な遺伝情報そのものは変わらないという場合もあります。このような状態のまま、細胞が正常に生存し続け進化していくと、染色体数(注4)の異なる近縁種ができると考えられます。したがって、セントロメア領域の機能不全は、病気の原因となるものの、一方では進化や種形成に関わっているかもしれない不思議な生命現象なのです。

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→研究内容
セントロメアが染色体分配においてとても重要な領域であるということは、広く認識されていますが、そのゲノム領域の解析は遅れています。その理由は、セントロメア領域に長大な繰り返し配列が存在しており、繰り返し配列のゲノム解読は大変難しいため、ゲノム計画において無視されてきた領域だからです。しかしながら、染色体機能や染色体進化を考察するためには、多様な生物種において、セントロメアのゲノム領域を解析する必要があることは自明です。そこで、本研究では、ニワトリのセントロメア領域を徹底的に解析しました。これらの実験には、セントロメアに含まれるタンパク質に結合する多数のDNA断片を回収してそのDNA配列について次世代シーケンサー(注3)を用いて解析しました。
その結果、ニワトリでは、繰り返し配列を含む従来型のセントロメア領域をもつ染色体に加えて、繰り返し配列のないセントロメアをもつ染色体が少なくとも3本はあることが明らかになりました (図2)。繰り返し配列のない正常なセントロメアをもつ染色体を3本も持つ生物は、現在まで他に報告されていません。この知見は、セントロメア配列がどのように生成されていくのかを理解する鍵となります。
さらに、セントロメア配列を条件的に取り除くことのできるゲノム工学技術を開発して、繰り返し配列のないセントロメアが、本当に機能的なセントロメアかどうかを検証しました。その結果、セントロメア配列を除いた染色体は分配されないことがわかり(図3)、機能的なセントロメア配列であることを証明できました。

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→本研究の意義
前述のように、セントロメア配列を決定することは、ゲノム進化を考えるうえで科学的意義が高く、そのうえ遺伝病の理解に大きな示唆を与えます。がん細胞などでは、染色体数の大きな変化が観察され、これはセントロメアを構成するタンパク質の変異が原因の一つであると説明されています。また、ヒト細胞内では、稀に、本来セントロメアでない配列がセントロメアとなり(ネオセントロメア現象)、染色体がちぎれて、染色体数が変化してしまう現象が観察されます。ニワトリの繰り返し配列のないセントロメアは、天然のネオセントロメアと考えられ、この領域の詳細解析は、セントロメアの形成機構を考えるうえで極めて重要です。また、この領域を実験的に取り除くゲノム工学技術は、がん細胞の性質の理解に貢献します。言い換えれば、セントロメアを取り除くことで、がん細胞のようなゲノム不安定を起こす細胞を実験的に作成できるからです。この実験系は、抗がん剤のスクリーニングなどに有効な実験系になるとも思われます。

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