| イネが示す植物生殖器官の新たな分化様式 |
| Developmental Biology Published online ahead of print: December 9, 2010 |
| 野々村研究室(実験圃場)、倉田研究室(植物遺伝研究室)
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Ovule is a lateral organ finally differentiated from the terminating floral meristem in rice.
Shinichiro Yamaki, Yasuo Nagato, Nori Kurata and Ken-Ichi Nonomura
Developmental Biology Published online ahead of print: December 9, 2010 doi:10.1016/j.ydbio.2010.12.006
植物の体を構成するほぼ全ての器官は、「メリステム(分裂組織)」と呼ばれる未分化細胞塊から作られます。地上部のメリステムからは、葉と花序、そして花弁や雄しべなどの花器官が順次作られます。雌性生殖器官である雌しべは、花メリステムが作る最後の花器官と考えられています。
雌しべは、心皮(注1)が胚珠(注2)を包み込む構造をしています(図1A)。被子植物のうち双子葉植物であるシロイヌナズナなどでは、まず心皮ができ、心皮のうえに胚珠が作られます。すなわち、胚珠は心皮の従属的な器官であると考えられています。本研究では、胚珠の形成が異常になる突然変異体を用いた遺伝子発現の観察から、単子葉植物であるイネでは胚珠が花メリステムから直接に作られており、心皮とは細胞系譜が異なることを明らかにしました。
転写因子タンパク質をコードする OsMADS13 遺伝子の働きが突然変異により失われた植物体では、胚珠になるべき場所に本来は消滅するべき花メリステム細胞が残存し(図2)、心皮を作り続けていました(図1B)。この結果は、 OsMADS13 遺伝子には花メリステム細胞の未分化状態を終わらせる働きがあることを明らかにすると同時に、イネの胚珠が花メリステムの未分化細胞から直接形成されることを示しています。また胚珠形成の初期段階で雌性の始原生殖細胞が作られますが、その直前にサイトカイニン(植物ホルモンの一種)活性化酵素をコードする LOG 遺伝子が一過的に発現することが明らかになり、サイトカイニンが生殖細胞形成に関わる可能性が初めて示唆されました。
本研究で得られた知見は、元々は胚珠こそが花メリステムが作る最後の花器官である可能性を示唆しており、胚珠が心皮の従属的な器官であるとする従来の考えに一石を投じるものです。また植物が個体発生から生殖細胞形成へ移行するメカニズムを解き明かす上で非常に重要な意味を持つと考えます。
本研究は、科研費・若手(S)(21678001)、特定領域研究 (18075009)の助成を受けました。
注1)心皮…雌しべを構成する葉状の原基。完成した雌しべの子房壁、花柱、柱頭になる。
注2)胚珠…子房壁に包まれる雌性の生殖器官。内部に胚のう、卵細胞を生じ、受精後は種子になる。
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図1.イネの雌しべの断面。正常なイネでは心皮の内側に胚珠ができるが(A)、 OsMADS13 遺伝子が壊れた変異体では胚珠がなく、代わりに多くの心皮(矢頭)ができている(B)。ca:心皮、ov:胚珠。
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図2.雌しべ原基における未分化細胞のマーカー OSH1 遺伝子の発現。正常なイネでは心皮に被われた胚珠部分で OSH1 は発現しないが(A)、 OsMADS13 遺伝子が壊れた変異体では OSH1 が発現する(B)。ca:心皮、ov:胚珠。
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