プラスミドをみちびく灯台 -ParAタンパク質の濃度勾配によるプラスミドDNA分子の移動と分配のメカニズム-
Molecular Microbiology誌 オンライン公開中
仁木研究室(原核生物遺伝研究室)
Partitioning of P1 plasmids by gradual distribution of the ATPase ParA
波田野俊之{現所属;マサチューセッツ州立大学医学部 細胞生物学科 Greenfield (Kip) Sluder 研究室}、仁木宏典
Molecular Microbiology , Article first published online: 6 : OCT 2010.  DOI: 10.1111/j.1365-2958.2010.07398.x


 たった2マイクロメートルの小さなバクテリアにも、染色体やプラスミドを積極的、能動的に娘細胞に分配するシステムが存在する。私たちは最も洗練された分配のモデルシステムとして、低コピー数プラスミドの分配を研究してきた。プラスミドの分配は、ATPアーゼ、DNA結合タンパク質、分配のためDNA配列というわずか3つの必須因子によって分配される。最近、種々のプラスミドのATPアーゼが細胞内で繊維状のポリマー構造を作っていることが見いだされた。このポリマー状のATPアーゼの重合反応により、プラスミドを押したり引っ張る、あるいはレールとして移動方向を決めるなどのモデルが提唱されている。
 代表的な分配システムの一つであるP1プラスミドでは、ATPアーゼであるParAタンパク質が、細胞内全体に広がって分布し、繊維状の構造は観察されていなかった。そのため、P1プラスミドでは、どうやってプラスミドを分配しているかは不明であった。私たちは、生きた細胞内でParAタンパク質の局在を計測した。ParAタンパク質は、細胞内全体に広がっているのではなく、細胞の大部分を占める核様体に広がって分布していた。また、分布は均一ではなく、ParAタンパク質が多く集まる中心部分があることを見いだした。この重合の中心は、集合、拡散を繰り返しながら、細胞の中央部にあったものが、2つに分かれる。この時、P1プラスミドDNA分子はこの中心に向かって常に移動した。これまでの繊維構造によるモデルとは異なり、ParAタンパク質の濃度勾配を利用してプラスミド分配が起ることを観察した。以上の結果から、私たちは、プラスミド分配にATPaseタンパク質の繊維構造が直接的にプラスミドDNAを動かすのではなく、その濃度勾配の形成がプラスミドの移動方向と最終目的地を決定するというモデルを提唱した。


Figure
ParAは細胞の中央で集合拡散を繰り返す(赤丸)。ParAの集合場所は次第に細胞の長さの1/4の地点に移動し、プラスミド(紫)はそれを追いかける。次に、反対側の細胞の長さの1/4の場所にParAが集合し始める。複製された1組のプラスミドのうち一つは新しいParAの場所に向かって移動し、残り1つは元の場所に留まる。その結果プラスミドは細胞の両側に移動し、細胞分裂後には娘細胞に分配される。

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