クロマチン構造の新しいモデル
Current Opinion in Cell Biology誌 22, 291-297, 2010.
前島研究室(生体高分子研究室)
Chromatin structure: does the 30-nm fibre exist in vivo?
Kazuhiro Maeshima, Saera Hihara and Mikhail Eltsov
Current Opinion in Cell Biology, 22. 291-297, 2010.  doi:10.1016/j.ceb.2010.03.001


 全長2mにもおよぶヒトゲノムDNAは人体の設計図であり、直径10μmの細胞核や直径0.7μmの分裂期染色体のなかに折り畳められています。教科書などでは、直径2nmのDNAはまず塩基性蛋白質ヒストンに巻かれ、ヌクレオソームと呼ばれる構造体になり、さらに折り畳まれて直径約30nmのクロマチン繊維になるとされています。しかしこの30nmクロマチン繊維が、どのように直径10μmの細胞核や直径約0.7μmの分裂期染色体の中に、折り畳まれているのかは全くの謎であり、長年に渡って生物学者たちの興味を集めてきました。最近、私たちはクライオ電子顕微鏡観察を用いた解析から、従来のモデルに提唱されているような規則的な階層構造が、30nmクロマチン繊維も含めて存在せず、ヌクレオソーム構造がとても不規則な形で折り畳まれていることを見出しました。このように不規則に折り畳まれた個々のヌクレオソームは、規則性を持つ大きな構造に比べて、物理的な束縛が少なく、より動きやすいという利点を持っていると考えられます。この総説においては、個々のヌクレオソームの「ゆらぎ」に基づく動きが、遺伝子の発現、DNA複製、染色体凝縮などのゲノムの機能に重要な役割を果たしている新たな可能性を論じました。


説明図
分裂期染色体や核内では、ヌクレオソーム構造がとても不規則な形で折り畳まれている。不規則に折り畳まれた個々のヌクレオソーム (Polymer melt状態)は、規則性を持つ大きな構造に比べて、物理的な束縛が少なく、より動きやすいという利点を持っている。


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